キングダム 28巻 「陥落の危機」
*ネタバレあり*
- 作者: 原泰久
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2012/11/19
- メディア: コミック
- クリック: 5回
- この商品を含むブログ (7件) を見る
山場を迎えた各所での戦い。
蒙武・騰連合軍の奮戦と、
桓騎・張唐の奇襲作戦。
そしてついに函谷関の望楼に火の手があがります。
下衆な元野盗野郎のはず‥‥なのに、
桓騎が繰り出す機転に震える‥‥!
【あらすじ】
蒙武・騰連合軍 対 楚軍の戦場では、
壁隊3000人が出陣したのを皮切りに、蒙武は高等戦術・"斜陣がけ"を仕掛ける。
猪突猛進が特徴のはずの蒙武の戦略に、
敵味方共に驚きを隠せない。
騰軍側からは楚軍・カリンがついに動き出す。
巨大な戦象を登場させ、戦場を掻き回し
秦軍の度肝を抜いた後、
緻密に組まれた楚の布陣が騰軍の前に現れた。
さすがの騰も小さく冷や汗をかく。
騰は、劣勢配置の状況の中、
王賁と蒙恬を急遽五千人将に抜擢。
2人に左右の軍の指揮を任せるという賭けに出る。
しかしその決断は、先に出陣した
録嗚未、干央らの軍を見殺しにすることになる苦渋の決断でもあった。
騰の突然の抜擢に対し、
王賁と蒙恬は見事に期待に応える。
話合う時間もないまま出陣した左軍の王賁と
右軍の蒙恬だったが、
まるで鏡合わせのように2人同時に同じ戦略で左右を戦っていた。
2人の奮戦の功により、カリン 対 騰 の戦場は思わぬ接戦にもつれこむこととなった。
一方、函谷関。
魏・呉鳳明は、巨大井闌車に引き続き、
巨大な床弩(しょうど)を積んだ車を何十台も用意してきた。
規格外のその床弩車は、4メートルにも及ぶ矢が装填されており、
その矢は函谷関の壁に向かって一斉に射ち放たれた。
壁に刺さった矢からは綱が下がっており、
その綱をつたって次から次へと魏軍が壁上に登ってくる。
更には件の井闌車が現れ、再び函谷関に梯子がかけられてしまった。
これにより、張唐の持ち場から魏軍に攻め込まれ、桓騎、蒙鷙の持ち場にも魏軍がなだれ込んできてしまう。
そして張唐は、成恢の毒の影響により、死の効果が現れる時期を迎えていた。
その時、劣勢の戦況を打破するために桓騎が動く。
騎馬した桓騎は、井闌車に煙玉を投げ込み、
魏軍が一瞬怯んだ隙に地上へ下り立つ。
15万はいる敵兵の中に、桓騎はたった80ほどの騎馬を引き連れ、
魏軍から奪った魏の旗を掲げて堂々と敵兵の海の中を渡って行く。
前夜に桓騎と対面した張唐は、
"武将"の存在を愚弄する桓騎と意見が決裂してはいたものの、
目の前の15万の軍の中へ自らの策を実行する
桓騎の"度胸"と"戦術眼"に舌を巻き、
その勇敢さを認めざるを得なかった。
そして死期を悟った張唐もまた、戦場で命を全うしたい思いから、
桓騎と共に地上に下り立つ。
敵軍は、今にも崩壊しそうな函谷関の上ばかりに注目しており、
そのため桓騎らは悠々と敵軍の中を進んでいた。
更に、目立たぬように別働隊を5つに分けて進ませており、400の隊で韓将・成恢の首を落としにかかる。
ついに成恢の姿を捉えた張唐。
背を向けて逃げる成恢に武将の意地を見せ付け、
見事成恢の首を討ち取ることに成功。
そして張唐は、そこで息絶えるのだった。
その頃、部下に任せていた函谷関の桓騎の持ち場はかなりの侵攻に遭い、
ついに3階建ての望楼に火の手が上がってしまう。
一方、函谷関左の山岳地帯を護る
王翦は、忽然と姿を消してしまう。
攻め入るオルドの主攻隊が王翦軍の心臓部ともいえる場所を襲い、
王翦は退却を余儀なくされたかのように見られていた。
オルドは、類い希なる"山読み"の才を発揮し、
函谷関の裏へのルートを塞いでいる
巨大な絶壁の前まで攻め込んできていた。
そして、号令をかけ、函谷関へ攻め込らんと絶壁を駆け登っていくオルド達の背に、
王翦が目を光らせていたーーー。
* * *
敵兵が次々と押し寄せ、
函谷関もいよいよ大詰めです。
キングダムは、
"始皇帝(=政)が歴史上初めて中華を統一するまでの物語"
なので、きっと秦がここで落ちる訳はないのです。
それを分かっていながら読んでいるというのに、
一体どうやったらこの合従軍を振り切れるのか、
どうやってこの状況を切り抜けるのか、
誰が死んで誰が生き残るのか、
ハラハラしっ放しでたまらない!
このあたりは、ハァハァ言いながら読んでいた気がします‥‥。
さて。前半は対楚。
蒙武が高等戦術"斜陣がけ"を仕掛け、
戦場がどよめきます。
どうでもいいのですが、
蒙武が部下の来輝(らいき)と血管で語り合うシーンにウケました。
(第296話 30ページ)
そして騰軍の方は、
王賁・蒙恬の活躍で劣勢からの立て直しに成功。
若手の実力を見抜き、信じて抜擢する騰にも感心しますが、
見事に期待に応える2人にもしびれますな。
蒙恬の覚悟と湧き上がる士気に対し、
一瞬呆気にとられた後に感極まって
涙ぐむ"じィ"の表情が何だか泣ける。
(第298話 71ページ。特に6コマ目!)
じィ、ずっと蒙恬の側で仕えてきて、
誰よりも蒙恬の戦の才能を理解するが故に、
流し流しの蒙恬の性格にヤキモキさせられてきたんだろうなぁ。
信たち同世代と出会って、
お互い競い合ううち、蒙恬も本気度が増してきた。
蒙鷙を必死で護ろうとした廉頗戦を含め、
そういう関わりの中で成長した蒙恬は、
今や立派な将。
じィの思い、伝わってるよ!
そして函谷関では大ピンチ。
また呉鳳明のヤツが巨大な武器を用意してきやがりました。
わらわらと函谷関の上へ登ってくる敵兵たち。
劣勢を打破するために、桓騎が動きます。
15万の敵の軍勢の中をすり抜けて敵将を討つ、
なんて大胆な作戦、
一体どうやったら考えつくんだ!!
無茶には慣れているはずの桓騎の部下たちでさえ、15万人を目の前にして怯んでます。(当然)
そんな時にこの一言。
🔴桓騎 : 「ハハッ 心配すんな雷土(らいど)」
「全部 上手くいく」
か‥‥かっけー!!
黒桜さんも頬を赤らめてますよ(そりゃそうだわ‥‥ポッ)。
国に対する気構えや考え方が相反する桓騎に対し、
これまで張唐は決して良い感情を抱いていませんでしたが、
さすがにこの奇策を決行する勇気と度胸には
うなったようです。
滅茶苦茶な策のようでいて、常に先読みして細かく作戦立てしている緻密さにも、
張唐は一目置きます。
50年間の戦歴を誇る張唐、
毒にやられて死に至らされる己に激昂し、
毒矢に射たれた後も驚異の精神力と
武将の最後の意地で、
成恢を撃破!
桓騎兵が
「いっ いけェ 張唐っ」
と応援してる姿も熱かった。
そして最期、死に際の桓騎との会話。
🔴張唐 : 「貴様は 戦が 楽しいのだ
己の力で戦に勝つ快感に はまっておる
‥‥そして それは‥‥
名武将の持つ気質そのものだ
腹立たしいが
才能も‥‥ある
土下座などせぬが‥‥
儂と約束せィ
秦国一の武将となれ
桓騎
秦を‥‥頼むぞ」
🔴桓騎 : 「‥‥‥寝言は死んで言えよ じじィ」
桓騎兵 : 「お お頭」
🔴張唐 : 「フッ 剛情な 奴め‥‥」
桓騎兵・張唐兵 : 「あっ」「ちっ 張唐様ァァ」
🔴桓騎 : (ガッ)崩れ落ちる張唐の襟元をつかむ。
「‥‥チッ 調子の狂うじじィだったぜ 全く」
‥‥親子ほども歳が離れているせいもあってか、
何故か仲違いしていた親子が最期にお互いを認め合ったかのような、
そんな雰囲気すら感じさせられました‥‥。
結局桓騎が張唐に答えることは無かったけれど、
桓騎が馬鹿にしていた"武将"の意地は
しっかり張唐が見せてくれた。
何かしら伝わったからこそ、
息絶えた張唐を受けとめたのでしょう。
さりげにジーンとくる名シーンだったな‥‥。
さてさて、ラストは(忘れかけていた)王翦 対 オルド。
王翦、ホントに山、得意だな。
次巻に続く。
【メモ】
⭕汗明軍、軍師が豊富。
●貝満(べいまん) : 軍師 兼 将軍
●仁凹(じんおう) : 軍師
●剛摩諸(ごうましょ) : 軍師 兼 将軍
⭕戦象さんを操る謎の南蛮人?
言葉が方言風。
例 : 「キタバイ キタバイ」
「ナンヤアリャ」
「モウヨカロ」
「ヨカカナ」
「ヨカヨネ」
⭕おまけマンガ「狼牙がゆく」