キングダムが好きすぎて。

キングダムが好きすぎるあまり、自分を落ち着かせるためにまとめました。

キングダム 44巻

*ネタバレあり*
キングダム 44 (ヤングジャンプコミックス)

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黒羊丘戦もいよいよ佳境の44巻です。

信の大活躍で戦の勝敗はもう決したような
ものかと思っていたのですが、

今回の戦のメインテーマはきっと"勝敗"なのではなく、、、

将軍を目指す信が、政とともに中華統一を目指すにあたり、
今一度振り返らなければならないこと、
そして仲間たちに指し示さなければならないこと、

あらためて飛信隊の在り方をここで再確認する必要があったと思わせられる今巻です。

みどころや注目シーンも随所にあり、、!!

まずはあらすじから、そして感想をつづりたいと思います。


【あらすじ】
趙軍総大将・慶舎を追撃し、とうとう本陣にまで迫った信。

迫り来る飛信隊の勢いを目の当たりにし、
慶舎は一旦本陣を捨てて退こうとするが、
那貴が少数騎で慶舎本陣へ奇襲をかけた一瞬の隙をつき、信は本陣を突破し慶舎と対峙する。

激しい打ち合いの末、信はついに慶舎を討ち取ることに成功。
歓喜に沸き立つ飛信隊だったが、すぐさま趙軍が押し寄せてきたために早々に丘から離脱。

趙軍・劉冬の足どめに奮闘していた羌瘣 も、
同じ頃見事劉冬を討ち取り、
退却中の飛信隊に合流し丘裏から離脱する。


まさに電光石火の奇襲であった上に
丘の裏側での出来事だったため、
信が慶舎を討ち取った事実はこの日桓騎の耳にすら届かなかった。

そして趙軍の中でこの急報が届いたのは
丘の右側の将・金毛と、
左側の将・紀彗のもとにのみであった。

慶舎の敗北と片腕の劉冬の死に嘆き叫ぶ紀彗であったが、
絶望する金毛に対し
このまま退却せずに軍を立て直し、慶舎の死を悟られる前に中央丘の奪取を急ぐべきだと主張する。
中央丘を制し、砦化さえすれば、戦は実質趙軍の勝利なのである。

天然の要塞である黒羊の地を秦国に奪われることは趙にとって最悪の侵略要地と化することであり、
そうなれば国境が縮小されるが故多くの難民を生み出す悲劇となってしまうーーー、

黒羊の先にある離眼を守るためにも黒羊を奪われるわけにはいかない紀彗は、
もう一人の片腕である馬呈とともに丘の奪取を急ぐのであった。




その頃、桓騎は砂鬼一家を呼び寄せ、捕らえた趙人に対して残虐な拷問をかけさせていた。

そこで紀彗の名を知った桓騎は、
丘の奪取に奮戦していた自軍へ突然の撤退指示を出す。

そして中央丘は趙軍へ明け渡され、すっかり紀彗らによって砦化されてしまう。

桓騎のこの突然の指示は、趙軍をはじめ桓騎軍の側近たちですらも理解不能なものであったが、
桓騎は戦の勝利を確信し、ほくそ笑んでいた。  




戦5日目となる翌朝。

樹海をくぐり抜け、やっとの思いで持ち場に戻ってきた信たちは、
すっかり趙軍に砦化された中央丘を目にし茫然とする。

そして樹海の中に不自然な砂煙が起こっているのを見つけた羌瘣はその方角に青ざめ、
砂煙の出どころへと駆けつける。

その先は、羌瘣が劉冬への夜襲で負傷した際に瀕死の状態でたどり着き、介抱されていた集落であった。

その集落が全て焼き払われ、村人たちは一人残らず惨殺されていたのだ。

山積みにされた死体の山の中に、自分を介抱してくれた老婆の姿を目にした羌瘣は怒りに震え、
桓騎の命令でやったと話す桓騎軍の兵士を容赦なく斬り捨て、
信とともに桓騎のもとへ向かう。


桓騎軍の本陣へ乗り込んだ信と羌瘣だったが、
ただの凌辱と虐殺にいちいち喚くなと
桓騎に一蹴される。

趙に攻めこんで趙人が死ぬのは普通のことだろう、と雷土に挑発された信は激怒し、激しい殴り合いとなる。
黒桜が信に矢を放とうとした瞬間、羌瘣がそれを阻止。
さらには桓騎の首に剣を当て、事態は収拾のつかない状態になってしまう。


信は、
「制圧した地での反乱に対する刃と
無力・無抵抗の人間に向ける刃とは決して違う
それが戦争だと言い切る奴は
武将じゃなくただの略奪者だ
そんな奴らがどれだけ勝ち続けようと
"中華統一"などできるわけがない」

と主張するが、

桓騎は信を"一番の極悪人"だと言い、

「中華統一とは敵国が抵抗できなくなるまで
とことん殺しまくって
その国の土地と人と物全部をぶん捕ることであり、
"大殺戮"、"大略奪"である
それをやって平和な世界が来たって喜ぶのは秦人だけだ」

と返す。

羌瘣は、これ以上桓騎に何を話しても無駄だと言い、これ以上無意味な村焼きをやめるようにと忠告。
前日に信がすでに慶舎を討ち取ったため、
村焼きなどやっている場合ではなく
趙軍の中央丘の砦化を阻止するべきだと主張する。

羌瘣の発言で初めて慶舎の死を知った桓騎だったが、
「村焼きは続行し、黒羊中の人間を皆殺しにする」
と返答。

そして羌瘣を挑発するかのように、部下に田有を捕らえさせ、首をかき斬れと命令。

田有の首に剣がめり込みかけたその瞬間、焦る羌瘣と信の前へ、尾平が突然止めに入る。

尾平は、
「焼かれた村は、趙軍と無関係ではなかった」
と発言し、誤解なんだと言って信や羌瘣 の怒りを収めようとする。

那貴が飛信隊へ入るかわりに桓騎軍へと配属されていた尾平は、
桓騎軍で行動を共にしていた巴印(はいん)と焼け跡となった件の集落を訪れた際、
死体の山を直接目にはしていなかった。
そして巴印からこの集落は一般人の集落ではなく
"趙軍の基地"
だったと聞かされていたのである。

森の中で飛信隊を討つ戦闘態勢に入っている桓騎軍の存在を知る尾平は、
早くこの状況を収めなければ飛信隊が攻撃されると焦り、信を急いで説得しようとする。

しかしその時、
尾平の体から集落での拾い物として巴印に半ば無理やり持たされた腕飾りが落ち、
それを見た信に激昂されてしまう。

尾平は弁解しようとするが、信の失望と怒りは収まらず、尾平を殴り、二度と戻ってくるなと飛信隊から追放してしまう。

羌瘣に信の説得を頼む尾平だったが、
尾平が落とした腕飾りが自分を介抱してくれた老婆のものだと気付いた羌瘣 も怒りが抑えられず、
尾平を突き放してしまう。

仲間割れを始めた飛信隊に対し、
桓騎は場がシラけたと言い、
結果的にはその場に血が流れることはないまま事態は収まったのだった。




信と羌瘣から突き放された尾平は、
自分の言い分もちゃんと聞いてくれずに
飛信隊から出て行けと言われたことにショックを受け、
故郷へ帰ると言って慶ら仲間たちに当たりちらしていた。

信への文句や愚痴を喚く尾平だったが、
たまたま通りがかった桓騎兵たちの
信への侮辱の言葉を耳にし、
思わず怒りに震えて殴りかかってしまう。

止めに入った那貴のおかげで収拾がついたものの、
尾平は瀕死の状態で飛信隊の天幕へと運ばれた。

尾平が目覚めると側には信がいた。

自らも民家に入って盗み食いをしたことが2度ある、という過去を語りだした信。

一度目は、意識朦朧の飢餓状態でやっと見つけた食糧だったため、腐りかけていたものでもとんでもなく美味く感じたが、
二度目は、後に同じような状況で食糧を見つけ、
飢餓状態といえるほどではなかったが空腹だったためそれを食べたら、その時はまるでクソのような味がした、と。

過去の自らの経験から、"そういうこと"なのだと実感した信は、
尾平に語り聞かせる。

信は、かつて漂と夢見ていた
子どもの頃から描き続けた
"誰より強くてかっこいい天下の大将軍"
像を色褪せさせる気は全くない、と言い切る。

しかし、そのせいで仲間たちが青臭いとバカにされたり、色々と我慢させて自分のわがままに付き合わせているということは理解しており、
悪いと思っている、と詫びる。

しかし信は、それでもそこだけは決して譲りたくないし、
飛信隊とはそういう隊でありたいのだ、
と話す。

尾平は涙しながらも改めて信の考えを理解し、それに共感し、また共に闘うことを誓うのだった。




飛信隊が内輪揉めをしている間、
桓騎軍は着々と事を進めていた。

桓騎は紀彗のもとに伝文を送りつけ、
兵ではなく、子どもを含む一般の黒羊の民の死体を集めて砂鬼に作らせた
"骸の巨像"
を紀彗に見せつける。

桓騎は、

「これ以上の惨劇をお前の離眼城で起こしてやる故楽しみにしていろ」

と紀彗への伝文に書き記し、
離眼城へと進軍するーーー。



【感想】
意外と長引いている黒羊丘戦ですが、
信が見事慶舎を討ち取り、今巻で終わると思ってました。

開戦前から一筋縄ではいかない戦になるという前フリはあったものの、
桓騎の容赦なき残虐プレイに過去の対魏国・廉頗戦が思い起こされ、
敵ながら紀彗が白亀西の最期のようなことにならぬことを願うばかりです。。

さて、とにもかくにも信が大武功を挙げました!!

個人的には慶舎にあまり思い入れがなかったので、
早く仕留めて話を進めて欲しいなぁなどと
思っておりましたが、

信に斬られる間際に慶舎の想いが少しだけ吐露されていて(心の声として)、
死の瞬間の者の想いを目の当たりにすると
何だかちょっとだけ泣きそうになってしまった。。

そして刻同じくして、羌瘣に討たれた劉冬の最期のシーン。

離眼の悲劇を共に乗り越え支えてきた城主・紀彗にかける強い想いが分かるからこそ、
このシーンはめちゃくちゃ切なかったです。

でも、仲間にかける想いは羌瘣とて絶対に譲れない。

「侵略者じゃない、私達は‥‥飛信隊だ」

と言った羌瘣 の表情がものすごく苦しそうで
読んでいてとても辛かった。

羌瘣が劉冬にかけた最期の言葉は、
死にゆく劉冬にとっては何のなぐさめにもならないことは羌瘣 もわかっていて、
守り子を劉冬に返したことも死の間際のほんの一瞬のみの安堵にしかならなかったのだろうとは思います。

羌瘣の言葉に救われる部分はあったはずだけれど、
劉冬は、残してしまう紀彗や馬呈への想いと、秦への憎しみでただただ無念だっただろうな。。
息を引き取る直前のコマの劉冬の眼が、
本当に切なかった。
それでも討ち取ったのが羌瘣であったこと、互いの覚悟を理解し合えた者同士、わずかながらに通づるものもあったのではないかと思いたいです。


信と羌瘣の互いの戦いが同時中継だったのはすごくよかったですねー。
隊長・信に大将首をとらせるために、そして隊のために、逃げる力も残せないほどの力を出し切ってしまう羌瘣。

廉頗戦の時と同じように、仲間のために無茶をする(死にかけた)羌瘣のことをちゃんと理解し、助けに戻った信に、超絶萌えました!!
まさかの見開きサービスショットでしたね!

そして
🔴信 : 「逃げる力くらい残しとけよ  バカ」

って、ちょ‥‥!(テレる!)

俺たちの羌瘣はいつだって信へのスーパーアシストを決める、文句なしのヒロインだぜ!!



さて、桓騎です!

砂鬼一家に拷問させて吐かせた紀彗の存在、
余すところなく存分に利用しそうな予感で
背筋が凍りました。

嫌な予感はしていましたが、羌瘣を介抱してくれた混バアが、桓騎軍によって見るも無残な姿に、、、。

混バアだけでなく、村人全員、女子どもまでもが皆殺し。

その積み上げられた死体の山を見た羌瘣 は、
ブチ切れて瞬時に5人ぐらい斬ってしまいました。

かつて象姉の首を見た瞬間のトラウマがある羌瘣にとって、この仕打ちは無いわー。。。


そうしてブチ切れた信と羌瘣は桓騎のところへ乗り込みますが、
盗みや虐殺・凌辱がフツーの桓騎軍に信の美学が通るはずも無く、
案の定真っ向から対立。

そして田有が見せしめ的に斬られかけたところに、尾平が登場。
この場を収めるべく信たちの説得に奮闘するものの、
まるでタイミングを計ったかのように
桓騎兵の巴印に半ば無理矢理持たされた
紫水晶の高級腕飾りを落としてしまいます。

その腕飾りは哀しすぎることに混バアのもの‥‥。

尾平の言い分は2人に聞いてもらえるはずもなく、大もめとなってしまいました‥‥。

尾平の気持ちは分かるし、青いとはいえ信や羌瘣の隊にかける想いも理解できるからこそ、
どうしようもないところですよね‥‥。

ていうか、ここのあたりすべて桓騎が描いた筋書き通りのような気がして、なんか怖い!

そもそも桓騎軍へのトレード要員として古参メンバー希望で尾平をチョイスしたところも、
女や酒をエサに、あえてアピールしていたところも、
今回焼け跡の村で尾平に村人の死体を見せなかったことや
紫水晶の腕飾りをほぼ無理矢理持たせたことも、

すべてこうなることを予測してというか、
こうなるように仕向けていたかのような気がして本当に怖い。

どこまでが計算で、どこからが本音なのか
読めないしつかめない、、

「ここで大人の戦いを覚えていけ」
と開戦前に信に言いましたが、
青臭い信のやり方や美学に対し、
挑発しているような気もします。


結局、内輪もめしてしまった飛信隊でしたが、
なんやかんやで収まるところに収まりました。
飛信隊には尾平がいないと始まりませんから。笑

今回、
隊としての方針が真っ向から違いすぎる桓騎軍とあえて対比させることで、
隊長である信の信念を、
仲間同士が再確認するよき機会となりました。

信は、
"漂と夢見た大将軍"になりたい。
"漂と夢見た大将軍"像でないと、信にとっては全く意味がない。

信の夢は、ある意味漂の夢を叶えることでもありますもんね‥‥。

信の想いはメンバーに伝わり、
「どこの隊よりも心が潤ってる」
と尾平に言われた信は、
多分泣いてましたね。

信たちの持つ青臭さには、読んでいても確かにクサいなと思うことも確かにあるのですが、
そういう青臭さに胸を熱くさせられたりもするんですよね‥‥。

中華統一に向けて戦いの規模が拡大していく
今後に向けて、ここで飛信隊としての在り方を今一度再確認すべき意味があったのではないかと思います。


あと、首を斬られかけた田有の傷の手当てをする羌瘣の天幕でのシーン、
ものすごくよかった‥‥
わたし的には44巻のハイライトシーンです。

自分の読みが甘かったせいで、田有を死なせてしまうところだった、と詫びる羌瘣 と
羌瘣をねぎらいつつ、疲れたな、と声をかける田有。
混バアの腕飾りを握りしめて、素直に疲れたと吐き出す羌瘣 に、
飛信隊生え抜きメンバー同士の絆を感じて
胸が熱くなりました‥‥。

田有は結構初期から羌瘣が女だということにうっすら気づいていたのに、黙っていてくれたメンバー。
そんな田有に、さすがの羌瘣も心を許していたんだな、と思うと、感慨深すぎて泣けてきます。
こういうシーンをサラッと入れてくれるところが、原先生のニクいところです!


さて、今巻ラストですが、
桓騎が離眼城へ向けて進軍しました。
やっぱりやりおったー。。。

以前に雷土が、

「どこをえぐれば一番相手がもだえ苦しむか見さだめようとしている」

と桓騎を評しておりましたが、

慶舎が討たれた今、実質趙軍の指揮を執っているのは紀彗であり、
その紀彗が最も苦しむこととは、、、

読者的にもそれは辛い!!

桓騎が飛信隊に課した任務の内容も気になりつつ、
敵ながら離眼の無事を願いつつ、
45巻へ続きます。



【メモ】
⭕️那貴一家の、那貴以外のメンバーの髪型がなんかかわいい。(お団子だらけ)とくに呂敏(ろびん)。

⭕️黒桜さん、桓騎にあごクイされて鼻血を出す。笑

⭕️桓騎、紀彗を
"趙軍でも秦軍でもない第三の人間"
と判断し、いたぶることを宣言‥‥。

⭕️那貴はキレたら雷土よりおっかないらしい‥‥。

⭕️おまけマンガ 「出会い」
本編に描かれなかった李牧と慶舎の出会いが描かれてます。

⭕️カバー裏・裏表紙側:慶舎のカット。