キングダムが好きすぎて。

キングダムが好きすぎるあまり、自分を落ち着かせるためにまとめました。

キングダム 38巻 「新しい国」

*ネタバレあり*


前巻では、国をつくってしまった太后様。

久々の登場に、
もう、いらんことして〜。。。
信の次の戦も、政の加冠の儀もしばらく先延ばしかよ〜。。。
と邪魔に思っていたわたくしでしたが、
まさかそのどちらにも関わってくる展開になろうとは‥‥!

そして、今巻ではさまざまな人物たちの心の声が描かれており、
久々に内面側のキングダムを堪能できる巻だと思います。

巻末おまけも、読者待望(?)の展開に!

それでは、あらすじから追っていきます。


【あらすじ】
嫪毐(ろうあい)を君主とし、太原で"毐国"の建国宣言をした太后

その毐国では、太后の側近宦官である趙高(ちょうこう)が政治的手腕を発揮し、国としての骨格を一手に作り上げていた。

有能な文官を他国から買い集め、金を使って大国・"楚"と裏で繋がるなど、大方の予想に反して毐国は着々と独立国家としての体を形づくっていく。

そんな折、毐国の太后のもとへ呂不韋が現れた。

呂不韋は、相国として政治的な話をしに来たのではなく、
太后に対して"恋人としての本当の別れ"を告げに来たのだと話す。

そして、後にも先にも己の心を奪った女は太后だけであり、
出会った頃から変わらずずっと愛している、
と一方的に告げると、
呂不韋の予想外の発言に思わず固まる太后を置き、立ち去っていった。



その頃、著雍では、緊急ではあるが正式な論功式典が執り行われていた。

著雍での対魏戦、そしてその後の築城と防衛戦の功により、騰将軍が秦国二人目の大将軍に任命される。
そして信と王賁は、ふたり揃って四千人将から五千人将への昇格が決定した。

著雍守備戦での功を考えれば、作戦を描き勝利に導いた王賁と信が同列昇格なのはおかしい、と玉鳳隊からは怒号が飛ぶも、
飛信隊のメンバーや信は、将軍まであとひとつの位となった今回の昇格を素直に喜んだ。


そして年が明け、ついに始皇9年。
政の"加冠の儀"が執り行われる年となる。

五千人将となった信は、隆国将軍の下につき、著雍防衛や築城の任務にあたっていた。
最低限の守りの砦が完成すれば、
いよいよ著雍を拠点とした魏国攻略戦が始まる。
その築城の完成は、もうあと一歩のところまできていた。



一方、毐国では、突然の騒動が巻き起こる。
太后と嫪毐の間の"不義の関係"が側近達の知るところとなったのだ。

毐国大臣・虎歴(これき)の報告では、
ふたりの間に出来た隠し子の存在が咸陽にばれ、怒った咸陽は毐国を討つべく軍を興す準備に入っているという。

虎歴は、秦軍が攻めてくる前にいち早く挙兵し、奇襲をかけるよう嫪毐に促すが、
嫪毐は、毐国で平穏な生活を望む太后の真の願望を知るが故に、即断を避ける。

10日が経ち、大多数の側近達は太后に対し早急に挙兵するよう非難しはじめ、
すっかり虎歴大臣の扇動に流されてしまっていた。

太后は、暴動を促す虎歴の後ろだてには出身地である"楚"がついていると推測。
虎歴は、毐国の暴走により秦国が乱れることを期待する楚王の手先としてに毐国に潜り込んでいたのだと悟る。

決断を迫る虎歴は太后に対し、取る道は2つに1つだと示した。

1つ目は、"挙兵からの咸陽急襲"。

魏国攻略や楚軍侵攻防衛のために多くの兵は出払っており、中央が手薄となっている今は絶好の好機であると説明する。

そして2つ目は、"太后と嫪毐、隠し子2人の首をはねて咸陽へ届け、許しを乞う道"。

毐国が落ちれば9族にわたりさらし首になるであろう罪深き反逆罪、
提案した2つに1つの道しか生き残る術はない、
と虎歴は太后に再度決断を迫る。

太后は、挙兵を選択。
旧王都・雍(よう)で政の"加冠の儀"が行われる日、咸陽の主要人物が雍に入り、咸陽を留守にする好機を狙い、急襲を決行すると宣言した。



翌月、政の"加冠の儀"が執り行われる日がやってきた。

式典には、秦国名家の面々だけでなく、敵国である六国の使節団も参列し、錚々たる顔ぶれが集う。
そして太后も式典に参列する。

政が宮内に姿を現した瞬間、
宮内の空気が明らかに変わったのを、
その場にいる全ての者が感じていた。

光をまとっているかのようにも見える、
威圧ではなく包み込むような政のたたずまいに、
誰もが息をのむ。

式典は滞りなく進み、
政は晴れて帯剣し、加冠を済ませ、
第31代秦国大王として承認される。
宮内は歓喜の渦となった。


その時、式典の最中に急報が入る。


毐国軍と思われる兵3万が、函谷関をすり抜け、北道より咸陽へ迫っているという。

毐国軍は、太后が過去に作った"偽の玉璽"を使い、函谷関をくぐり抜けていた。

太后は、式典に参列しながら内部の様子を見て、"隠し子"の存在が咸陽に漏れていないことに気づくと同時に、
己が呂不韋に踊らされていたのだということを悟る。

呂不韋は、毐国軍に咸陽を攻め落とさせ、
毐国軍に忍び込ませた配下達を使って咸陽を壊滅させることで、王族を一人残らず虐殺する算段であった。

秦王家の血を根絶やしにした後、
毐国反乱軍は自らが抱える蒙武軍に討たせることにより、王族が消えたあと国民が自分に国を託すように仕向ける計画だったのだ。

事が計画通りに進み、ほくそ笑む呂不韋
そして呂不韋は、緊急事態が起こったため、"加冠の儀"は中止すると宣言する。

すると政は、呂不韋を御し、落ち着いた様子で式典の続行を宣言。

予想外の政の行動を訝しむ呂不韋だったが、
政は、

「反乱軍を止める軍はすでに向かってきている」

と告げるーーー。




* * *




ついに、ついに政が"加冠の儀"を迎えました‥‥!!

昌文君や壁じゃないけど、よくぞここまで‥‥!と感極まります。

表紙もインパクトありましたが、政の正装姿は本当に素晴らしく王の風格が溢れてました。


そんな政の母、太后様の胸の内。
これが38巻の主軸となります。


今までの太后様には、呂不韋に人生を狂わされた色情魔、ぐらいの印象しかありませんでしたが、
今巻では内情が丁寧に描かれ、
哀しくも切ない背景がみられました。

それにしても、第406話27ページ・"美姫"過去シーンの可憐な美少女ショットからの、28ページ・"毒婦太后"ショットは衝撃でしたね‥‥。

非道な仕打ちはここまで女の姿を変貌させるものなのか。

にもかかわらず、奈落の底に突き落とした張本人である呂不韋

「儂は変わらずずっとそなたを愛している」

発言には、太后でなくとも
「どの口が‥‥!」なのですが、

後から読み返すと、呂不韋的にもひとつの覚悟を決めた表れの発言だったのかもしれません。
(初めはコレも呂不韋の何かしらの作戦か?と疑ったぐらいでしたが。)


さて、太后様話はちょっと置いといて。

ついに信が五千人将昇格しました!!

将軍まであと一歩。
騰は大将軍となり、王賁も五千人将になりました。

王賁の将軍昇格はあえて見送られたようでしたが、こういう"分かってる"上司の存在は有難いと思うなあ。
先にポストを与えられることで伸びるタイプもいるだろうけど、

🔴騰 : 「五千人将の目を通してこそ 将軍の存在がいかなるものか より見えてくる」

という大将軍からの言葉の重みに、こちとら納得せざるを得ません。


そしてさりげに羌瘣が三千人将に!

"新年のごあいさつ"シーン(第408話)で、

🔴羌瘣 : 「独立はない 私は最後まで飛信隊だ」

と断言したことにすごく安心しました。

羌瘣が「将軍になる」発言をした時から、いずれ飛信隊離脱もあり得るのかなーなどと心配していたので、
ここではっきり羌瘣が否定したことでホッとしました。

と同時に、信とのどうこうはともかく、羌瘣にとって自然に
"帰る場所=飛信隊"
になっていることがすごく嬉しかった。

まあ、隆国の指摘通り、五千人隊+三千人隊の飛信隊の将が五千人将、っていう矛盾は気にならなくもないけれど。

百人隊から始まった飛信隊。
将軍まで本当にあと一歩、短いようで長かった。
やっぱり、(途中一時離脱したとはいえ)生え抜きメンバーである羌瘣にはずっとここに居て欲しいのです。

あと、

🔴羌瘣 : 「許さん」
🔴信 : 「それ もういい」

こんなもはや夫婦漫才状態のふたりの掛け合い、コレもいつまでも見ていたい。笑


それから今回、今まで激シブの存在感だったはずの隆国が、まさかのネチネチキャラにキャラ変していたのは衝撃でした。
隆国のあのマイルドなシブキャラ、好きだったのに‥‥!

まあ、機転が利くということは、
総じて細かい性格のはずだということで‥‥
信を立派な将軍に導いていってほしいと願いますな。


さて、ここでまた太后様の話に戻ります。

まず太后の側近宦官・趙高ですが、あのハァハァキャラは一体‥‥?!
デキる男に間違いはないようですが、
なんかあやしい奴なのか?単純に太后の味方なのか?と疑ってはみたものの、
18巻で太后が政を後宮に呼び出すために送った白紙の書簡なんてものがありましたが、
その案はこの趙高の指示だったようだし、
(この時は黒ずくめで顔は唇しか見えませんでしたが)
それなりに長く太后に仕えていて頭も切れ、信頼を得ている存在のようではあります。

そして嫪毐は、元々呂不韋がしつこく求めてくる太后との体の関係を断つために、宦官を装い男娼として後宮に送りこまれた男でしたが、

太后様はたいそうお気に召したようで、嫪毐の体に溺れ、いつしか双子の子を出産。

知らぬ間にすごい事をやらかしたな‥‥と前巻では呆れましたが、

ただの色情魔だと思っていた太后の心の闇、流した涙。
ただの性奴隷だと思っていた嫪毐が見せる、太后への想い。

破滅の道を進む2人の間には、いつしか子どもを通して穏やかな絆のようなものが生まれていたんですね。

嫪毐は太后の"心を休めたい"という願いを叶えるために、
"毐王様"などと呼ばれ天狗になりかけて我を忘れていた自分を律し、
太后のために毐国を揺るがぬものにしようと決意。

‥‥なんの取り柄も持たなかった嫪毐が、いきなり凄まじい権力を手にした上で、金や名誉欲に狂わずに我を取り戻したことが、(太后への想いに対し)健気すぎて泣ける。

呂不韋は「あれが好いた男か?」と嫪毐を一瞥して、小馬鹿にしている風だったけど、

太后が言った「あーそうさ あんたの百倍やさしいよ」
との返しの言葉は強がりでも嘘でもなく、本当なんだな。(加えて、"あっち"もすごいことが重要なのでしょうけども。)

かつて呂不韋が"美姫"に近づいたのは、
そもそも後のシナリオを実現させるための品定めだったのか。
それとも、単純に"邯鄲の宝石"に心奪われ、恋に落ちた後に思いついたシナリオだったのか。

どちらにしても、"唯一心を奪われた女"に対し、9年もの間趙へ放置した非道すぎる行為は、普通の人間には出来ないでしょう。

完全に破滅しかない未来ですが、太后のために覚悟を決めて立ち上がる嫪毐の今後を、少しだけ祈りをこめて見守りたいです。



そして38巻でハラハラさせられるのが心理戦。

誰と誰が通じていて、誰が誰を欺いているのか。
色々予想するだけでめちゃくちゃ面白いです。
コミックス派なので、あくまで想像の範囲ではありますが、相関図を頭の中で描いてみました。


まずは、太后が楚王との繋がりを推測していた虎歴。
咸陽に隠し子の存在がバレたと(おそらく)嘘をつき、咸陽攻めを扇動した張本人です。

80ページから、樊於期(はんおき)将軍と繋がっていることと、
168ページ最後のコマから、樊於期が呂不韋の手下であることは明らかなので、
呂不韋から此度のシナリオを実現させるために毐国に送り込まれた手先なのでしょう。

となると、
完璧に隠し通せていたはずの隠し子の件、
虎歴が頭の中で語っていた

🔴虎歴 : 「実は初めの雍にて出産した時に 一人の御仁にだけ知られてしまっていた あの御仁にな‥‥」

の"御仁"とは、呂不韋なのでしょうか。

もし呂不韋太后の隠し子の件を知っていたとなると、前巻で朱凶を使って太后と嫪毐を探っていた呂氏四柱・李斯にも、知らせていなかったということで。

37巻ラストで、李斯が送りこんだ朱凶がムタみたいな奴に始末されていて、隠し子の件は闇に葬られていたけれど、
あのムタみたいな奴は、実は呂不韋側が雇っていたとか?

隠し子の件がバレたらそれこそ咸陽側が黙っていないだろうしそうなると今回の呂不韋の筋書きは実現しない。

もしそうなら、なにもかも知っていて泳がせて、
太后に向かっては
「どうかここで静かに余生を過ごせ」
とか言うなんて、この男、心底鬼だな!

と予想しながらも、、、
読み返してみると、なんか趙高の動きもあやしい気がするんですよね。。。
でも"御仁"と言うからには、その正体はそれなりの立場の人物に違いないだろうし。。。
最初は昌平君かなとも思ったけど、
今後の展開を考えると、"サイ"戦で掴んだ心を再び政から離す理由も見当たらないし。
とは言いつつも、貂を軍師学校に入れた時に
「今すぐどうこうはしないが、いい駒が手に入った」
とか昌平君が言ってたことも今さら気になりだしたり。(キリがないなー)


次巻は、そんな昌平君の動きに注目です。
貂へ届いた手紙、明らかにあやしい伝令係の孫築さんは、確実に中身を見ていますが、
貂は果たして孫築さんの嘘に騙されているのでしょうか?

加冠の儀の前に、昌平君が昌文君に目くばせ的なことをしていたのも気になる!
政陣営の味方なのか?やはり敵のままなのか?!

呂氏四柱であり、軍総司令でもある昌平君の出方は、おそらく次回の超重要ポイントになりそう。

利口な貂のこと、きっと何かに気づいているはず。
でないと最終ページの頼もしい信の後ろ姿には繋がりませんからね!


ワクワクしまくりの38巻でしたが、
次巻が気になりすぎる!

さらにトドメのおまけページ‥‥

信&羌瘣のハプニングの続きに、胸ドキせずにはいられない!

3ヶ月先を指折り数えながら、39巻へ続きます。


【メモ】
⭕キャラクター紹介ページイラスト、一部リニューアル。

⭕おまけマンガ「天幕(テント)」
羌瘣の前髪が短いけど、もしかして過去話?
現在は前髪伸ばしてますからねぇ。
(リニューアルした巻頭のキャラクター紹介ページでは、何故か新髪型バージョンではなく旧髪型のカットが使われていますが)

"対魏の前線地〜"とあるから、普通に現在の対魏守衛の前線と思っていたけど、
まさか以前の対魏・廉頗戦の時の時期設定?
でもそれじゃあ過去すぎるか。
どっちにしても‥‥萌え‥‥続きが気になる!


⭕カバー裏・表紙側:政の冠
カバー裏・裏表紙側:おまけマンガからの、信&羌瘣

キングダム 37巻 「これからの戦国」

*ネタバレあり*


前巻で、奇跡的に(ほぼ)無傷で生還した貂。
操もどうにか保たれました。

戦はついに3日目!
作戦決行のためには、凱孟軍のキレ者軍師・荀草を深く策にはめこまないと勝ち目無し、とのことで、貂がかなり頑張ります。

そして魏火龍編、思わぬ幕で決着が着き、次の展開が早くも楽しみ過ぎてソワソワ。


ドヤ王賁の見せ場シーンに、ぶっちぎる羌瘣と、なかなか爽快な展開を見せながらも、
後半の締めは何やら得体の知れない暗雲が。

37巻もみどころ満載すぎていろいろ詰まってます!

では、あらすじから。


【あらすじ】
著雍戦、3日目。
きたる正午の"作戦決行"に向け、各所では激しい戦いが始まった。

信は凱孟と一騎討ちに入り、
2日間あえて停滞していた録嗚未軍も全軍出陣。

そして前日紫伯軍に完敗を喫した玉鳳隊は、紫伯撃破にこだわり抜く王賁の執念により、死闘を繰り広げていた。

前夜。
魏国一の槍の実力者である紫伯に対し、王賁ではまだ力が及ばぬと判断する千人将・関常は、再び一騎討ちに挑むは無謀であると意見する。

もし敗北するとなれば、すなわち作戦の失敗となり、首謀者の王賁は大敗の原因を作った戦犯となり得るため、作戦自体を中止するべきだと促していた。

しかし王賁は、無理に見える戦局を覆してこそ名があがるのだと言って聞かず、作戦決行を貫き通す。

そして再び紫伯との決戦。
前日の負傷も伴い、王賁はまたも苦戦するが、
何度も紫伯の槍を受けながら、王賁は徐々に紫伯の槍技の"型"を捉えはじめる。

紫季歌を失って以後、"生"への本能が欠如している紫伯は、それゆえに"急所を守る"という人間本来の反射反応が皆無であった。

王賁は、紫伯のその動きに違和感を覚え、"生"への執着を持たない紫伯に対し、それは弱点となると確信する。

そして王賁は粘り強く打ち合った末、ついに紫伯の型を捉え、急所を貫くことに成功。
王賁は紫伯を撃破する。


一方、飛信隊の持ち場では、信と凱孟が激しく打ち合いを続けていた。

ひねりがなさすぎるように見える貂の戦い方に対し、凱孟軍軍師・荀草は訝しむが、
貂は頃合いを察し、凱孟軍の横から挟撃を仕掛けるように見せかけていた右軍の羌瘣隊に合図を送り、呉鳳明本陣を目指して離脱させる。

羌瘣隊が本陣へ向かうことにより、がら空きになった飛信隊の右翼側から凱孟軍が中央になだれ込んでくる。
敵軍に取り囲まれ、窮地に陥る飛信隊。

その時、右手の山側から、隆国将軍率いる援軍が現れた。

貂は、この時のために前夜から隆国将軍のもとへ援軍の要請に向かい、連動を図っていたのだった。

魏軍に気づかれることなく援軍が絶妙なタイミングで現れたという状況を鑑みて、荀草は隆国軍を危険な敵と判断。凱孟に退却するように指示を送り、信と凱孟の一騎討ちはそこで終了となった。
凱孟軍退却後、信はすぐさま本陣に向かう。



そして呉鳳明本陣では、
紫伯を討ち取った玉鳳隊が真っ先に突入してきていた。その数3000人強。

呉鳳明が対応を指示しているそばから、録嗚未軍も突入。その数8000人。

そして羌瘣率いる飛信隊・約2000人が本陣へ突入。
呉鳳明本陣は3軍同時の突入に混乱する。

騰軍が秦の"主攻"であると錯覚し、作戦を読み間違えたことに気づいた呉鳳明は、
もはや喉元までに迫り来る3軍を止める術は無いと悟る。

その頃、飛信隊は呉鳳明本陣の間近まで迫っていた。
羌瘣は、岳雷と我呂に隊を任せ、1人で呉鳳明本陣へ突撃。
遮る魏軍兵を瞬殺し、呉鳳明の天幕の中まで辿り着いた羌瘣は、呉鳳明の首を刎ねるが、
側近の表情から替玉だということに気づく。

呉鳳明本人を討ち損ねたものの、本陣は壊滅状態。
羌瘣は、魏軍本陣一帯に火を放ち、"敵本陣陥落の狼煙"をあげて全戦場に秦軍勝利の報を伝えるように指示。
勝利の狼煙を目にした秦軍は歓喜に沸き立ち、呉鳳明が討たれたと落胆した魏軍は戦意を失った。


秦軍勝利に各所が沸き立つ一方で、
替玉により逃げ切り、騰本陣を目指し立て直しを図っていた呉鳳明は、
逃亡の途中で同様の算段により動いていた霊凰と出くわす。

本陣を捨てた経緯を説明する呉鳳明に対し、霊凰は、「現在援軍が来ない騰軍を攻め込み、騰の首さえ獲れば、一気に魏軍の勝利に傾けさせることができる」と断言。
騰軍に対し全軍攻撃を仕掛けるつもりであることを話しているまさにその時、
2人の前に信の刃が襲いかかる。

信は、本陣に向かう途中、偶然目に入った呉鳳明軍の逃亡中の砂塵に気づき、向かってきていたのだ。

矛を振り上げた信は、呉鳳明の顔を知らなかった故に、呉鳳明が咄嗟に霊凰に向かって発した「鳳明様お逃げをっ」という声に反応し、霊凰を斬った。

攻撃の衝撃により信が落馬した隙に、呉鳳明は逃亡。恩師を身代わりに切り捨ててまでも、呉鳳明は「これからの戦国を魏が勝ち残るために」と言い放ち、逃げ切るのだった。

これにより、魏軍は完全撤退。
秦軍の勝利が決定する。

この勝利により、秦は魏の重要地・著雍を奪い取ることに成功。
さらに、出陣前に昌平君から騰に出されていた指示により、著雍に塁を張り巡らせ、天然地形を活かした大要塞を築くという大計画が発表された。

著雍を拠点とし、まずは魏国の弱体化を図ることで、秦が中華へ躍り出る第一歩が踏み出されることとなったのである。



著雍の戦から2ヶ月が過ぎた頃、
咸陽では、王宮に突然太后が現れる。

卜(うらない)により、2年間ほど離宮に隠れていたという太后だったが、
突然の訪問の理由として、
「"山陽"と"著雍"一帯を後宮の三大宮家で固めて統治し、金を落として一帯を強化したい」
と切り出す。

呂氏四柱・李斯(りし)は、著雍の築城でただでさえ金のかかる地に、後宮三大宮家の財を当て込むのは悪くない案だと考えながらも、即決はしかねるため検討させて欲しいと答える。

しかし太后は、三大宮家が推薦する宦官・嫪毐(ろうあい)を山陽の長官に迎え入れると言い、呂不韋に同意を求めた。

実際のところ嫪毐は宦官ではなく、呂不韋太后との体の関係を断つために後宮に送り込んだ男娼であった。
その事は王宮内でも呂不韋と李斯しか知らぬ事実であったため、ある種の脅しともいえる同意を求められた呂不韋は、太后の提案を認めざるを得なかった。
そして太后の思惑通りに事は強引に進められることとなる。

その後、李斯は隠密・朱凶を使い、太后と嫪毐を探る。

朱凶は太后と嫪毐の間に双子らしき兄妹(姉弟?)が生まれている事実を突き止めるが、李斯に報告する前に後宮の見張り番に殺されてしまう。

王宮では嫪毐の正体が一切不明のまま、山陽・著雍一帯の長官の人選は後宮にゆだねられていた。

首脳陣たちが困惑しているさなか、呂不韋は、長年にわたり編輯(へんしゅう)していた「呂氏春秋(りょししゅんじゅう)」という一大書物を完成させ、その祝いに勤しんでいた。

その頃、山陽の動きに何かを嗅ぎ取らせるため、昌平君は介億を派遣し、探りを入れていた。
介億はそこで、太后と嫪毐が山陽を出て"太原(たいげん)"という北の地に向かったという情報を掴む。

そして、咸陽の王宮にも、
秦国北東の地・太原に太后と嫪毐が山陽入り、
「太原一帯を"毐国"とすると宣言した」
という急報が入るーーー!




* * *




著雍戦最終日、熱かった!

(さらわれたせいで)貴重な時間を無駄にしたことに責任を感じる貂が、
挽回の策をどのように持ってくるのか、荀草との軍師対決に注目が高まります。

その前に、まずは苦戦中の玉鳳から。

魏火龍・槍の紫伯に王賁は押されまくり、関常からも今の王賁の力では勝てないと言われてしまいますが、
王賁は意地でも紫伯を倒すと言って聞きませんでした。

王賁は、
「大いなる勝利を手にし続けねば
中華に名を刻む大将軍には決して届かぬ」

と言い、

🔴王賁 : 「‥‥"夢"だ何だと浮ついた話ではない

これは‥‥
"王"家の正統な跡継ぎとしての
この王賁の責務だ」



と叫びます。

関常が、「そういうことか‥‥」
とつぶやいていましたが、正直何に納得したのかここではよく分かりませんでした。

そして、番陽副長の回想シーン。

幼少期の王賁が槍の練習をしていたところに、たまたま現れた王翦が一言だけ指南します。

王翦が王賁に言葉をかけるのはあまりに珍しい出来事だったらしいのですが、
思い起こせばその日を境にして王賁の槍の修練が始まったのだと番陽は気づきます。

今まで王賁は、王一族の"本家"であることにやたらとこだわり、
信が慕っていた同一族の王騎に対して「どこぞのバカが〜」と言ったり、"所詮は分家"的な物言いをしたりしていたので、
過去に王騎に対して恨みや確執でもあったのではないかと勘繰ってはいましたが、
もしかしたらそんな大袈裟なことではなくて、もっと単純なことだったのかも。

王賁は子ども心に、父親に槍を指南してもらえたことが素直に嬉しかった。
その日から父・王翦と自分を繋ぐものは槍となり、王賁は単純に父親に認めてもらいたくて、槍の使い手としての頂点を目指していたのかもしれない。

王翦が危険人物と言われている噂は、王賁も絶対耳にしたことがあるだろうし、そのことについて王賁がどう思っているのかは分からないけれど、
王翦は実力はあってもその思想ゆえに昭王の時代から日蔭に追いやられている。

かたや"分家"の王騎は、中華に名を馳せた"天下の大将軍"。

そのことが悔しかったのかもしれない。

だからこそ、"本家"にこだわり、"正統な跡継ぎ"である自分の立場にもこだわり、"天下の大将軍"にもこだわり続けている。
それなら必ず自分がなってみせる、と。

そういうことかな‥‥。(‥‥たぶん。)
そんなふうに感じました。

関常とは違う理由かも知れませんが、ずっと気になっていたひそかな疑問だったので、なんとなく今回でわたしも自分なりに納得したのでした。

王賁の王翦への感情は、これまであまり触れられてこなかったけれど、
今回の戦で父・王翦軍への援軍要請を断固として拒否したことを、自ら"私情がらみもある"と認めているだけに、2人の関係は今後詳しく描かれそうですね。

しかし、回想のちび王賁、意外と可愛かったです。(裏表紙で見た時は、一瞬新キャラかと思った。笑)

そして王賁をずっと見守る番陽副長、このじィはかつて飛信隊を見下した、ムカつく"気をつけ"じじィではありますが、
王賁への深い想いと信頼には、ちょっとじんわりきました。


さて、王賁が紫伯をくだし、録嗚未も出陣して、
いよいよ飛信隊の出番です!

貂が隆国軍に援軍の要請に行っていたなんて、予想外でした。確かに前夜、馬を走らせてたもんな。

なかなか来ない援軍に業を煮やし、

🔴貂 : 「何をしてんだ りっ‥‥」

と貂が叫ぶところでは、
り?誰?と思っていたら、まさかの隆国!

🔴隆国 :「‥‥全く世話のやける」

相変わらずシブいっす。

(しかし貂、将軍自ら援軍に来させるなんて、貸し一つどころか十ぐらい分あるだろ!!)

貂の策がまんまとハマり、凱孟軍は撤退。
そして作戦決行に向かったのは羌瘣、久々にぶっちぎりの強さを見せつけてくれます。

飛信隊が手柄を得るために、ちょっと到着を遅らせたという羌瘣(潰れ役をさせた他の2軍ごめんなさい)、
一人じゃ無理だと止める我呂に隊を任せ、なんと馬から下りて単身で呉鳳明本陣へ!

スヒ、バヒン、ザヒ、ラストはヒン!
呉鳳明の首を落とし‥‥たと思いきや、首は偽物。
身代わりの韓徳とやらは可哀想な最期でした。

羌瘣の無敵の動き、鮮やかすぎて見ていてスカッとします。
食いしん坊キャラも可愛くて大好きだけど、やっぱり強い羌瘣は最高ですな!
もっと手柄あげてほしい。。。

でも戦のラストはやっぱり信!
なんと逃げ延びた呉鳳明を発見します。
呉鳳明は咄嗟の機転で信に霊凰を斬らせて己の身を守り、逃亡に成功。

国を守るためには強き者が生き残らなければならないという理屈は分かるけど、よくも恩師を差し出したものだよ‥‥恐ろしい男!
(そして、無駄にイケメンである。)

信は、王賁が見事に魏火龍・紫伯を討ち取ったことに対し、自分は凱孟を仕留められなかったことを悔しがっていましたが、霊凰だって魏火龍の1人なのに"拾いもの"扱いなのが信らしい。笑

"軍師"は大軍を動かすし、言わずもがな戦の勝敗を左右する重要な役割を担っているけれど、
信が呉鳳明と霊凰の前に現れた時のような、武力以外では防ぎようのない危機的状況においては、軍師の命って儚すぎる。

李牧や廉頗みたいに軍師並の頭脳持ち+超絶武力のタイプは例外として、鳳明や霊凰みたいな軍師オンリーのタイプって(貂も)、いざという時はどうにもならない、できないという恐ろしさが常に戦場ではつきまとうんだろうな。

信としては、軍師なんて斬った気にもならなくて、同じ魏火龍の首でも満足できなかったのでしょうね。


という訳で派手に登場した魏火龍七師、あっさり2人が消えてしまいました。
14年も地下牢にいた奴らなんかにてこずって欲しくない!と思っていたので、ここのサクサク進む感は良かったです。

魏火龍に関してはいろいろとモヤモヤする点が多かったのですが(前巻パート参照)、
戦が終わってみて思うのは、
「世代交代の暗示」
を示唆する役割を果たすために登場したキャラだったのかなと。

時代は、次の世代へ。

呉鳳明も言っていましたが、もう六将や魏火龍の時代は終わっており、次の若い強者の時代に突入している。

六将はもういないし、三大天も、唯一初代で生き残っている廉頗が魏〜楚へ亡命したために、新しい三大天が任命されている現状。

個人的には、突然降って湧いたかのように思えた魏火龍の登場には多少やっつけ感が否めず、
初めてキングダムの展開にモヤモヤしたのですが、

今後、秦が中華統一のために勢力を拡大していく流れの中で、
秦は"過去"の傑物たちを上回る武威を示す必要があり、言い方は悪いのですが魏火龍はそれを示させるための捨て駒的な役割を担うために登場したのかな、と。

(史実ネタバレを何より恐れているわたしなので、恐る恐るでしか検索をかけていませんが、どうやら魏火龍は原先生のオリジナルキャラという意見がネットでちらほら。
史実にないキャラだったとしたら、激しく納得です。)

しかし、凱孟だけが生き残っているところが、ちょっと意味ありげ。
信が凱孟の一撃を受けた時、あの廉頗の一撃を受けた時と"同じ"位の重さを感じて"本物"だと認めた訳ですから、
紫伯や霊凰のようにあっさり死なれては困るっちゃあ困ります。
凱孟を生き残らせた意味がきっとあるはずですから、いずれ再び信と対峙した時、貂や羌瘣を絡めた色恋展開がまたあるのかも。

とにかく、魏火龍編はここで決着!
李牧の振りからも、次巻からは、いよいよ秦が中華統一に向けて本格的に出動か!


‥‥とワクワクしていた矢先、
まさかの太后再登場!!
嫪毐との間に子どもまでいやがった!!

次の戦いが早く見たいのに、邪魔してくれます太后さま。。。
口元のシワが一気に美貌を老けさせていましたね。。。
一体、"毐国"が秦の中華進出にどう邪魔してくるのか、
次巻が楽しみです。



【メモ】
⭕始皇8年、呂不韋呂氏春秋」完成。
⭕「呂氏春秋
●その時代までに存在した史書・思想書・学術書を"十二紀"に編輯。
礼・音楽・"気"の扱い・兵事・農耕など、あらゆる人の営みについての答えを網羅した大事典。

●中でも"時令"は、一年を十二に分ける"月"の発想が記されており、一年=十二ヶ月という形は現代にまで続いている。

●「一字千金」という逸話あり。

⭕見せ場あんまりなかったけど、20ページの録嗚未出陣シーン、めちゃ格好良い。

⭕おまけマンガはなし。
カバー裏は、表紙側のみ王賁の額ガードみたいな飾りもののイラスト。

キングダム 36巻 「新生玉鳳隊」

*ネタバレあり*


14年ぶりの復活を遂げた魏火龍七師。
秦軍では作戦が決まり、各対戦相手も決まって戦は進んでいきますが、

ここで突然、飛信隊に大事件が勃発!

そして予想外のタイミングで訪れたヒロイン決定戦?!

対魏戦の決着はまだつきませんが、
ヒロインの座はほぼリーチがかかったか?

ある意味衝撃の36巻。

じっくりあらすじから追っていきたいと思います。


【あらすじ】
王賁の立てた作戦に従い、"3日目の決戦"に向けて戦闘を開始した飛信隊・玉鳳隊・録嗚未軍の3軍。

飛信隊の持ち場では、"魏火龍"の1人・凱孟が猛撃をふるう。
凱孟は突然大声を張り上げ、信に一騎討ちをしろと挑発。それを聞きつけた信は受けて立ち、2人の一騎討ちが始まる。

怪力・凱孟の一撃を受け止める信に驚く魏軍だったが、凱孟の渾身の一撃の強さに信は身体ごと吹き飛ばされてしまう。
信は、かつて廉頗に受けた一撃のような"重さ"を凱孟の一撃ちにも感じるのだった。

負けじと応戦する信は、凱孟と激しく打ち合うが、一騎討ちの途中で凱孟に撤退指示の急報が入り、闘いは中断される。

その頃、撤退指示を出した凱孟の側近軍師・荀草(じゅんそう)は、飛信隊の軍師・貂に目を付け、貂を生け捕りにしていた。

意識が戻った貂は、近くに見えた羌瘣隊の旗に向かって叫ぶ。
貂の声を聞いた羌瘣は状況を察し、貂を救出に向かおうとするが、周囲の敵があまりにも多く苦戦を強いられていた。

さすがの羌瘣でもとても貂のいる場所までは到達できそうに無く、
さらに荀草の指示で羌瘣までもが生け捕りの対象にされたことに気づいた貂は、
羌瘣に向かって指揮官である荀草を捕らえるように叫ぶが、再び殴打され意識を失ってしまう。
羌瘣は、貂の指示を受け何とか必死に荀草を捕らえるが、貂はそのまま連れ去られてしまうのだった‥‥。


その日の夜。
飛信隊の野営地では、貂がさらわれたことを受け、全員が落胆していた。
信は心配のあまり苛立ち、詫びる羌瘣に対して激しく怒りをぶつける。

さらわれたらどんな目に遭うか分かっていながら何故助けられなかったのか、と信に強く非難された羌瘣は落ち込み、貂を助けに行こうとするが、仲間たちに止められる。

信や尾平らが、一か八か夜襲をかけて貂を助けにいくかどうかを話し合っている時、
元・麃公兵の我呂(がろ)は、古参のメンバーにとって馴染み深い人間とはいえ、貂1人のために危険を犯してまでする賭けなのかと疑問を呈する。

また、副長の渕は、
飛信隊が凱孟にやられた損害は大きく、軍師の貂も不在の今では、他の2軍のためにも作戦中止の伝者を送るべきではないか、と諭す。

しかし羌瘣は、作戦中止の前にひとつだけ試す手立てがあると話し、貂の咄嗟の指示で捕らえた凱孟の側近指揮官・荀草を使って、人質交換をもちかけることを提案。
その方向で隊の意見がまとまりかけた時、
再度我呂が口を挟む。

我呂は、無策で交渉を持ち掛ければ罠にはめられる危険性もあり、ちゃんと考えてから決めろと信たちに忠告。

交渉に進むにしろ、かなりの危険を犯してまで貂を助けにいく"動機の深さ"を知っておきたいという我呂は、
「貂は信の"女"なのか」
と信に尋ねる。
皆が何故か触れないようにしているが、そこをはっきりさせてくれると納得がいく、と話す我呂。

信は、貂との出会いを振り返り、
「貂は政とともに最初に出来た信の戦友であり、唯一の身内である漂が死んだ日からずっと自分の横にいる"たった一人の妹"のようなものだ」
と語る。
そして、
「貂のために特別無茶をやっているように見えるかもしれないが、貂を見殺しにするような真似は絶対にできない」
と言い切る。

その言葉に我呂も納得し、人質交換に望みを繋ぐことに意見がまとまった。


一方、捕らわれの身となっている貂は、
魏兵たちから激しく虐待を受ける寸前で檻から出され、凱孟のもとに呼ばれていた。

凱孟は、貂の表情を見て、貂に問いかける。

「女の身で軍師となり戦場などにいる
貴様の"欲望"はどこにあるのか」

と聞き、

「年若き女を戦場にまで引っ張り出してくる信とはどれほどの男なのか」

と興味を示す。

信の"女"なのかと問われて激しく否定する貂に対し、

「貴様にとって信とは何者なのか
心の奥底で信に何を求めているのか
貴様の"欲望"をぶちまけてみろ」

と再度尋ねる。

貂は、戸惑いながらも
「欲望かどうかは分からないが、
信の夢が叶って欲しい、
そして自分も一緒に幸せになりたい」

と話す。

凱孟は貂の願望を聞き、
それは"女の欲"であり、貂は戦場から去るべきだと忠告するが、
貂は「戦場で戦って幸せになる」といって退かなかった。

凱孟は貂の"強欲"に納得したのか
荀草と引き換えに貂を信のもとに返してやる、と言い出し、
無事に人質交換が決行されることになった。


その翌日。
無事に貂は飛信隊へ戻る。

貂は、自分のせいで作戦が遅れたことを悔やみ、
絶対にこの戦は勝とうと信に誓う。



一方、玉鳳隊の持ち場では、
魏火龍の1人・槍使いの紫伯(しはく)が王賁の前に立ちはだかる。

玉鳳隊は、半年前に王翦軍から派遣されてきた千人将・関常(かんじょう)が加わったことが隊の強化に大きく作用し、初日から前線の敵を蹴散らし爆進していた。

着々と"3日目の決戦"に向け駒を進めていた玉鳳隊だったが、
2日目に魏火龍の1人・紫伯が動き出し、
魏軍の他所の予備軍を連動させ玉鳳隊を包囲しにかかってきた。

完全に包囲される前に一旦離脱することを提案する関常に対し、王賁はそのまま突破をはかり、敵将の首を取ると言い切る。
意見が分かれた関常隊は退却に入り、王賁は敵将・紫伯の居所目がけて突進していく。

その時、王賁が見つけるより先に、突然紫伯が姿を現した。
激しく攻撃してくる紫伯の槍はまさに圧倒的であり、玉鳳隊の精鋭部隊ですら太刀打ち出来ずに次々と倒されていく。

王賁は紫伯と激しく打ち合うも、深手を負い、退却を決意。

隊を離脱させるための指示を出しながらも、
王賁自身は翌日必ず紫伯を討ち取るために紫伯の槍を目に焼き付ける必要があると言い、
命がけで殿(しんがり)をつとめていた。

深手を負った王賁は、先に離脱した関常隊が救出に現れたことによって助かるも、
結局、2日目の戦いは紫伯軍に敗れる形となってしまった。



一方、3つ目の主攻・録嗚未軍は、2日目を終えてもまだ本格的に動いていなかった。

魏火龍に当たらない録嗚未には、3日目の約束の時間にきっちり本陣に攻め入る算段があってのことだったが、
霊凰軍に攻め込まれている騰軍の脇を守るためでもあった。

様子を見にきた騰から、録嗚未は他の2軍が苦戦していることを聞く。

合従軍戦で中華に名を広めた呉鳳明が参戦することで、この著雍の戦は今や中華全土の注目を集めていることから、

録嗚未は、王賁の策に乗ったりせずに、騰こそが指揮をとりこの戦で力を見せつけるべきだったのではないか、と詰め寄る。

騰は、王騎が本気で大王・政と中華を獲りに行くつもりだったことを振り返り、
今の秦軍にそれにとりかかれる才覚のある武将が何人いるかと録嗚未に問う。

騰は、この著雍の戦を、
"秦軍の今後の武威の一角を担うべき若き才能たちの力と名を中華に響かせる戦い"
であると思っていると話し、
その力を示して欲しいと願っているのだったー。



そして作戦実行の日、3日目。

貂は、前夜からこの日のために駆け回っていた。

凱孟軍の軍師・荀草は、人質交換の際に凱孟が貂と千金抱き合わせてでも交換すると言っていたほどに凱孟にとって必要不可欠な軍師であった。

荀草と貂の戦術の戦いでもあるこの戦。
双方とも、慎重に互いを探っていた。

そして荀草が動く。
凱孟の位置を知らせ、誘い込まれてくる信らの首を討ち取ろうと目論み、布陣を組むーーー。



* * *



はわわ。。。

表紙からして王賁の巻だと思ったし、
今回はがっつり魏火龍との戦メインだな、
と思って読み進めていたのに、
いきなりここでヒロイン決定戦!?

意表をつかれすぎてアワアワしてしまいました‥‥。

貂が戦場で捕まる日が来ることは、なんとなく想像ぐらいはしていました。
信も言っていたように、貂は前線に出過ぎでしたし(そのおかげで隊が立て直されて助かったことは幾度もありましたが)、
その度にあんな無防備な小娘軍師、一瞬で殺されそうだ、といつも思ってました。

軍師のタイプも様々でしょうし、本陣で指揮をとるだけでなく、時には前線で細かい指示をしなければならない状況もあるにはあるでしょう。
しかし、まして女である貂、今まで無防備すぎました。

そしてさらわれた貂を、唯一状況を察した羌瘣が必死で助けようとしますが、
結局貂は連れ去られてしまいます。

謝る羌瘣に対し、信は胸ぐらを掴んで責めたて(おいおい)、責任を感じた羌瘣は1人で貂を助けに行こうとして仲間たちに止められます‥‥。

羌瘣、かわいそうに‥‥。
あんなに怒鳴られて、めちゃくちゃショック受けてるし‥‥。

でも実はわたしも、羌瘣が貂を助けられなくて密かにショックでした。
ゴメン羌瘣。必死で動けなくなるまで頑張ったのにね‥‥。


一方、貂は凱孟に質問責め。
凱孟のキャラがいまいちよく分かりませんが、
"人"や"欲望"に対して興味があるらしい。
一戦交じえたことで信に対する興味も強く、
貂に色々探りを入れてきますが、
"女の身で戦場に居座り、またそれをさせる信とは何者か、どういう存在なのか"
が知りたいようす。

そんなことアンタが知ってどうすんだよ‥‥
と思いながらも、
ここは読者的に薄々想像はつきながらもハッキリしたことがない貂の気持ちの部分。
貂はどう答えるんだろうとドキドキ。

貂は、戸惑いながらもハッキリ認めます。

「オレもあいつと一緒に幸せになりたい」

(!!)

そして、

🔴凱孟 : 「好いた男と共に戦場にあって添いとげようなどとはムシがよすぎる

このままいけば お前は必ず最悪の結末を迎えることになるぞ」

🔴凱孟 : 「お前が"女"ならばさっさと戦場から去‥‥」

🔴貂 : 「嫌だっ」

「オレは戦場で戦って そして幸せになるんだ」





‥‥やっぱり"幸せ"ってそういう意味だよね?!
貂から信への矢印はついにハッキリと示されてしまいました。
知りたかったような、知りたくなかったような‥‥。
そして凱孟の言う、"最悪の結末"が意味深すぎて気になります。


貂は信のそばにいるために努力して頑張ってきたけど、
初めは家族愛のようなものだったはず。


チビっ子の頃から天涯孤独の身で最悪環境の黒卑村で日銭を稼ぎ、たくましく生き延びていた貂。
信や政と出会い、一旦は平穏な日々を手に入れてその環境に満足していたものの、
次々と先に進んで行く信たちとの間に隔たりを感じはじめて、孤独感に思い悩む。
その頃同じ女の身で凄まじい剣技を身につける羌瘣に出会い、その強さに憧れて剣技の教えを請うも、却下され落ち込む。
落胆する貂を見かねて羌瘣が提案した道が、"軍師"への道だった。

すべては、"信に何かあった時、そこに自分がいないことが怖い、自分も同じ場所にいたい"

という強い願望から始まった貂の道。

今思い返すと、女だねェ〜。と感じずにはいられない想いだけれど、
当時のちび貂には、恋愛感情というよりは家族愛的な感情の方が強かったように思う。

でもここでははっきりと凱孟に
"女"としての感情を認めております。
長い時間を経て、大人になったんだね、貂‥‥。


そして一方で、飛信隊のほうでも大変な話題に!

出番が最近多くなってきた我呂さんからの素朴かつ絶妙な質問が!!

飛信隊のメンバーたちの動揺する表情に、こっちまでハラハラします。笑
羌瘣も目をまんまるくしてびっくり!
核心をつく我呂の質問に対し、羌瘣の反応を横目でチラ見する松左!(「子を産む」発言の余波か?!)

貂とは違って、信の答えは想像通り
「妹」
でした。


信は一貫して貂のことを妹扱いしていたし(あのキス事件の時ですら)、納得の答えではあったけれど、
貂の気持ちを知ってしまった今となっては読者としてちょっと複雑な思いに。
貂が健気なだけに‥‥切なさ倍増。

原先生が公式ガイドブックで、「貂と羌瘣の両方と結婚させたらダメか」と担当さんに聞いたら猛反対されたとおっしゃっていましたが、
ここにきて「早くハッキリさせろ」との指示でも出たのでしょうか?
なぜこのタイミングで!!とわたしはかなり動揺し、危うく本筋を忘れてしまうところでしたよ‥‥。


さて、キングダムの本筋はこっちです!

著雍戦、いよいよ作戦決行の3日目までやってきました。
順調に駒を進めていた玉鳳でしたが、魏火龍の紫伯が圧倒的な強さを見せ、王賁大苦戦。
父親・王翦軍から派遣されてきたデキる千人将"関常"はかなりの謎キャラですが、
何より王翦の意図が超謎。戦の後、明かされるのでしょうか?気になります。

そして魏火龍・紫伯の過去がざっくりと描かれていましたが、
キングダムにしてはちょっと粗い過去描写だった気がします。

〈かつて兄妹(※血は繋がっていない)で愛し合っていたという紫伯と妹の紫季歌(しきか)。

紫伯は紫季歌以外のことには無欲であり、紫季歌のためなら魏火龍の名すら捨ててもよいとすら思っていた。

ある日、紫伯の父・紫太(※一代前の紫伯。子が無く、紫伯も紫季歌も別々の妻の連れ子。)の嫉妬(※血の繋がりの無い紫伯が名前を継ぎ、更に地位や名声を手にしたことによる)により、紫季歌は紫伯と同じ魏火龍の1人・太呂慈(たいろじ)に無理矢理嫁がされる。

"妻殺し"の異名を持つ太呂慈は、紫季歌に対し、今後は自分だけを愛すると誓うように迫るも、紫季歌は反発。太呂慈は紫季歌を惨殺する。

全てを知った紫伯は激昂し、魏火龍内で対立が起こる。
太呂慈側についた晶仙(しょうせん)・馬統(ばとう)、
紫伯側についた霊凰・凱孟。(呉慶は中立の立場だった。)
紫伯は、父・紫太をはじめ、太呂慈・晶仙・馬統をたった1人で全員討ち殺す。

そして同士討ちの罪により、紫伯・霊凰・凱孟は
王が代わり呉鳳明の懇願により解放されるまで、14年間もの間投獄されることになる‥‥。〉



紫伯の過去はざっとこんな感じです。
"最愛の女を殺され、感情を失い、今や機械的に目の前の敵を超絶槍技でなぎ倒すだけの殺戮マシーンと化した男"
ってところでしょうか‥‥。

でも個人的には、設定があまりしっくりこなくてもやもやしました。

そんなに愛した女を失って、紫伯はよくも14年も自害せずに地下牢で生きたな、とか、

確かに理不尽な紫季歌の死は可哀想だし紫伯の怒りに同情もできるけれど、
魏火龍同士の絆や損得が全く見えない中、
大将軍ともあろう6人が、同士討ちの重罪を負ってまで対立し、
14年間も地下牢に繋がれるような割りの合わないことに協力するかなあ?とか、

そもそも紫伯の性格からして、なんとなく他人に頼らず1人でやりそうなのに、なんでわざわざ魏火龍内で派閥を組んで対立させる設定が必要だったんだろうか(実際1人で殺ったけど結局3人とも投獄されてるし)とか、

さらにさらに魏王も大将軍クラス6人も失うようなことになって、国としてどうだったんだとか、

あっちもこっちも何だかもやもやしました。

キングダムでこんなにもやもやすることは滅多に無いので自分でも戸惑いましたが、
原先生のことですからきっとこの先の展開にこれらのもやもやが活きてくるはず!
と思い直し、読み進めていくことにしました(笑)。


そして最後は、もうひとつあったもやもやが解決しました。

貂がさらわれた時、羌瘣を激しく非難して八つ当たりした信。
信が仲間を責めるシーンは珍しく、しかも相手は羌瘣。
何も胸ぐら掴んでまで怒らなくても‥‥!
精一杯できる限りのことをした羌瘣に対するこの仕打ちに対し、仲間たちは羌瘣をかばいますが、
信のいら立ちはおさまらず、羌瘣自身もへこんでました。

3日目の決戦の前夜、信は羌瘣を探してその時のことを謝ります。

🔴信 : 「昨夜は悪かったな お前に当たっちまって」

🔴羌瘣 : 「‥‥‥」

🔴信 : 「‥‥‥」

🔴羌瘣 : 「私だって何でもできるわけじゃない」

🔴信 : 「‥‥んなこた分かってる‥‥ただあん時は‥‥」

羌瘣に"つーん"とされる信。笑

🔴信 : 「オ オイ羌瘣」

🔴羌瘣 :「冗談だ
もし象姉が同じように捕まったら
きっとお前以上に私は取り乱してると思う」

🔴信 :「面目ねぇ」

🔴羌瘣 :「許さん」

🔴信 : 「オイ」

🔴羌瘣 : 「冗談だ」



信が仲間(しかも羌瘣)に当たるなんて余程のことなので、貂がさらわれたことへの動揺のMAX表現だったのでしょうが、結構ここで信の株は暴落したような気がしていたので、
このシーンでのフォローは良かったです。
"つーん"羌瘣もかわいかったし。

しかしながら、先にも述べたように、
わたしも羌瘣が貂を助けられなくて結構ショックだったのです。

何のショックなんだろうと自分でもよく分からなかったのですが、
羌瘣が信に
「私だって何でもできるわけじゃない」
と言ったことで腑に落ちました。

そう、羌瘣なら何でもできる、何でもしてくれる、と勝手に思いこんでいたのですねー。

信も羌瘣を頼りにするあまり、羌瘣の力にある意味甘えているあまり、貂を助けられなかったという羌瘣のたった1回の痛恨のミスを受け入れられなかったのでしょう。

羌瘣も大変だな。
あの強さが皆にとって当たり前になっちゃってるもんね。

そして貂の気持ちが明らかになったことにより、今後信との関係に変化はあるのか?そのことが信と羌瘣の微妙な距離感に変化をもたらすのか?
‥‥否が応でも気になりすぎる展開になってきました。


締めの騰&録嗚未のシーンも良かったです。
常に誰に対してもカッカしてるあの録嗚未が、騰のことはちゃんと認めてるんだなー、
としみじみ思わされる良いシーンでした。

自分ではなく、若手たちの名を中華に広めさせるため、その真の力をはかるとともに示させる。
騰が描く著雍戦の裏テーマにしびれます。
かつての主・王騎の夢を叶えたい、という想いも内包しながら。

騰は、理想の上司であり、理想の部下そのものですね。

次巻はいよいよ著雍戦"3日目"!




【メモ】
⭕魏火龍七師
●霊凰(れいおう)
●凱孟(がいもう)
●紫伯(しはく)
●太呂慈(たいろじ)
●晶仙(しょうせん)
●馬統(ばとう)
●呉慶(ごけい)

⭕我呂の貂救出に対する意見で
「古参のお前らにとっちゃ馴染みの深い奴なんだろうが一、二年の付き合いの俺らにとっちゃ納得しづれェー」(第386話 67ページ)
という言葉。

●飛信隊誕生(百人隊)
●三百人隊
●(急造)千人隊

⇩ ★羌瘣一時離脱・軍師・貂加入。

●(正式)千人隊

⇩★"サイ"戦で麃公兵残兵を率いる。

●三千人隊(麃公兵・岳雷、我呂正式加入)

⇩★羌瘣帰還

●五千人隊(現在) ※信・四千人将、羌瘣・千人将


古参メンバーと我呂の貂とのなじみの差は、羌瘣がいなかった1年強ぐらいの差。
にもかかわらず、確かに古参メンバーの貂の溺愛ぶりは顕著(笑)。

⭕おまけマンガ「天下の大料理人」

⭕カバー裏・表紙側に梟鳴スタイル貂のイラスト

キングダム 35巻 「剣と盾」

*ネタバレあり*


なんと成蟜、表紙のセンターいただきました。

まさかあの成蟜が、こんな成長を遂げていたなんて‥‥想像だにしませんでした。

そして政の命を受け、嵌められた成蟜を救出するために駆け付けた飛信隊、
みんな‥‥大きくなってる!
ビジュアル(主に女性陣)が大きく変わり、
気持ち新たに新章突入です。

では、あらすじから。


【あらすじ】
屯留(とんりゅう)における反乱鎮圧のため、
討伐軍として3万の軍を出陣させたのは、
2年前の合従軍戦以後 出世した将軍・壁だった。

表向きには"成蟜の反乱"と伝わる今回の事件だが、
政や昌文君は、呂不韋や趙がからんだ謀略の可能性が高いと踏んでいた。
憶測の域を出ない内は味方うちで事を済ませたいと考え、
事情を理解できるであろう壁と信に成蟜救出を依頼したのだった。


その頃、呂不韋と通じ屯留を実質支配しているホカクは、民に向かって雄弁をふるっていた。
成蟜こそが咸陽の実質の実権をとるにふさわしいとまつりあげ、皆で反乱を立ち上げ成蟜を支持するようにと誘導していたのである。

当の成蟜はホカクによって投獄されており、一度も民の前で反乱の協力を請う姿など見せたことなどなかったが、何も知らぬ民はホカクに同調し、
反乱を起こして咸陽を成蟜の手に、と息巻いていた。


屯留に向かう途中、壁軍は成蟜軍の裏切り者・龍羽将軍の軍に行く手を阻まれる。

応戦していた壁だが、そこにいきなり趙軍が現れ、龍羽将軍を援護。
本来、敵であるはずの趙軍が援護に入ってきたことで事情が掴めず動揺する壁だったが、
そこにタイミングよく飛信隊が到着。
四千人将となった信、復帰後早くも千人将に昇格した羌瘣を含めた飛信隊は五千人隊となり、頼もしく成長を遂げていた。

飛信隊の援護により、形勢は逆転。
裏切り者・龍羽将軍は、壁を討ち取りその首を土産に趙へ亡命する算段だったが、
援軍・趙軍が退却したことにより反乱軍も退却。
結果、壁軍が勝利となった。


壁と信らは、屯留に到着後、反乱鎮圧にかかる。

趙に亡命する前に壁の首がどうしても欲しい龍羽将軍は、壁軍を迎え討とうと反撃してくるが、
壁の策により死亡。
飛信隊は成蟜救出に急ぐが、
成蟜の居所が分からずに探し回る。

一方、成蟜はホカクの陰謀を知り、瑠衣救出のために地下牢を脱出し瑠衣を探していたが、
ホカクの追っ手と交戦しているうちに深手を追ってしまう。

何とか瑠衣のいる地下牢を探し出した成蟜だが、出血がひどく、瑠衣を救出し共に脱出している途中に倒れてしまう。
成蟜は嫌がる瑠衣を制し、助けを呼びに行かせる。
しかし、瑠衣を逃がした後、ホカクが成蟜の前に現れた‥‥。


一方、脱出に成功した瑠衣は、飛信隊に遭遇。
瑠衣は成蟜を助けるため、信らを連れて成蟜のもとへ急ぐが、
瑠衣が駆けつけると、そこにはホカクの死体と、
横たわる成蟜の姿があった。

瑠衣が成蟜を抱きかかえると、成蟜はかすかに意識を取り戻す。
死の間際、瑠衣にこの先の成蟜一派を引き継ぐように命じ、政の力になるようにと伝える。
そして信にも、
政にとって信は"中華統一"の道の支えとなっていること、自分が政の"剣"であり"盾"である存在であることを忘れるな、
と伝え、瑠衣の腕の中で息を引き取る。

反乱の首謀者・ホカクの死と、裏切り者・龍羽将軍の死により、屯留における仕組まれた反乱は鎮圧された。
しかし、成蟜の命を助けることができなかった信は、咸陽へ向かい政に詫びるのだった。

場面は切り替わりーーー


中華を狙う秦は、
新たな戦を始めようとしていた。

合従軍侵攻時に、李牧と春申君によって
秦が中華へ出づらくなるように国境を書きかえられていた秦は、
中華進出のための新たな要所・著雍(ちょよう)を奪取するため、魏国に侵攻を始めていた。

将軍・録嗚未と将軍・隆国を率いる騰が大将となり、著雍一帯を攻めていたが、
著雍の重要さを理解する魏国も、呉鳳明を大将に派遣し、万全の態勢で秦軍を迎え撃とうとしていた。

騰軍はさらなる戦力増大のため、周囲の戦場にいる部隊を著雍に呼び寄せる。
そして著雍に飛信隊と玉鳳隊が揃う。

騰の本陣に一同が集まり、作戦会議が開かれる。
隆国によると、魏軍には呉鳳明だけでなく、"正体不明の3軍"が現れたという。
その3軍は、わずか1日で立ち寄った秦の城を3つも陥落させたらしい。

謎の3軍は、計6万の大規模な軍である上に、魏軍のおいた布陣に付け入る隙は一分たりともなく、
騰は、現在北の趙国境付近にいる王翦軍に援軍の要請を出すつもりだと話す。

それを聞いた王賁は、激しく反対。
多少の私情を挟んでいることは認めつつ、
今王翦軍が趙の国境を離れれば、
趙が秦の東部を攻略せんと侵攻を深めてくるであろうと予想され、
下手をすれば魏・趙の両軍を相手にする羽目にもなりかねないと推測。

王賁は、完璧に見える魏軍布陣のわずかな弱点3ヶ所に注目し、
その3ヶ所を"主攻の3軍"で"同日同刻に撃破" すれば、それなりの歪みが必ず生まれるはずだと断言。
情報漏洩を防ぐため、3軍は連携を取らず、
"3日目の昼 日が天の真上に昇る刻"
に、
"3軍全てが魏軍本陣に突入する"
という策を打ちたてた。

主攻となる3軍は、
録嗚未軍、玉鳳隊、飛信隊。
騰は、王賁のこの策を採用する。



一方、魏軍本陣。
呉鳳明が呼び寄せていた謎の3軍は、
かつて中華に名を馳せた魏国7人の大将軍・"魏火龍七師(ぎかりゅうしちし)"の中の3人だった。

●呉鳳明の師である軍略家・"霊凰(れいおう)"、
●あげた武将首は百を超す剛将・"凱孟(がいもう)"、
●魏国史最強の槍使い・"紫伯(しはく)"。

かつて先代の王の時代、同士討ちを行ったせいで14年間投獄されていたという3人は、世間では死んだものとされていたが、
此度の戦にあたり、呉鳳明の懇願によって開放されたのである。

霊凰は、右腕である乱美迫(らんびはく)を騰軍にぶつける。
そして剛将・凱孟は信に狙いを定め、飛信隊に突撃してくるーーー。



* * *



壁のあんちゃん、将軍昇格!
いとこの郭雲や貂には、金の力だの家柄の力だのと茶化されてましたが、
壁のあんちゃんはいつだってその環境に甘んじず頑張ってきた立派な男です。
己の弱点にいつも向き合い、精進してきた結果の昇進。
おめでとう!壁!

そして飛信隊もかなりの出世を遂げていました。
34巻で一気に2年が過ぎたので、その間に
信は四千人将、
羌瘣は千人将で
なんと五千人隊に!!

14歳から始まった信の道、現在も着々と進んでいってます。
体も一回り大きくなって何だか頼もしい。

羌瘣も20歳前後となり、すっかり美人なお姉さんです。
まつ毛ビッシビシで前髪も伸ばして、
もう女だと隠す気は一切なさそう。いや、もう隠しきれない!
貂もカチューシャ的な髪飾りを付け少しだけ髪を伸ばし、大分女っぽくなりました。
可愛くなったな〜!

楚水、岳雷の存在感もなんだか増しているような気がしました。
今思ったけど、まだ副長のはずの渕さん、飛信隊首脳陣登場シーン〈※40ページ〉にいない‥‥。(笑)
ひとつの隊に副長って、一体何人ぐらい置けるんだろう。(素朴な疑問)

さて、成蟜救出ですが、
残念ながら失敗に終わってしまいました。

失敗とはいっても、成蟜の成長による思わぬ人徳(!)とデキる嫁・瑠衣の存在により、
成蟜の死後も呂不韋が目論んでいたほどの政陣営弱体化にはつながらなかったようす。

しかし呂不韋、己の手を汚さず、
持ちうるコネクションはふんだんに利用する、
本当に油断も隙もない奴。
未だに趙とつながり過ぎているし、
合従軍の時に見せた愛国心の無さが末恐ろしい。

何だかモヤモヤしていたところ、
信が政に詫びるために咸陽に寄った時、
たまたま見つけた呂不韋の前に飛び降りて

「お前は王様にはなれねぇ」

と言い放ったシーン(第378話 134ページ)には、胸がすきました。

反乱編、瑠衣には可哀想でしたが、
成蟜は最期に良い見せ場があってよかったかなと思います。
(屯留での滅多に見れない信&羌瘣のコンビプレイ(?)も貴重だったしね)
それに成蟜の最期の言葉には考えさせられるところがありました。


🔴成蟜 : 「奴(政)が"サイ"へ出陣する前に
"中華統一"の話を聞いた

五百年の争乱に終止符をうち 世を正す
響きは美しいが そうするには今の世に凄まじい血の雨を降らせ
中華を悲劇で覆わせることになる

正に血の業(わざ) はね返ってくる怨念は
長平の比ではないぞ」

(※第377話 111〜112ページ)


‥‥確かに、今まで政目線でしか考えてきませんでしたが、
中華統一が実現されるとすれば、秦以外の他国にとってはただの"侵略"。
国が滅ぼされる悲劇です。
呉鳳明の父・呉慶のような怨念をも生みだすでしょう‥‥。
成蟜に「はね返ってくる怨念は長平の比ではない」と言い表され、核心をついているその言葉にドキリとしました。



そして一年後には、いよいよ政と呂不韋の政権争いに決着が。
‥‥呂不韋はまだ何か企んでるっぽいし、どう落としどころを着けるのか、めちゃくちゃ楽しみ。



反乱編が終わり、新しい戦編に突入です。

合従軍で秦に攻め込んできた際、李牧と春申君は秦の国境を書き替えていたらしく、
山陽の次に秦の中華進出の要所となるべくは
魏国・"著雍(ちょよう)"。

騰が大将のこの戦で、
録嗚未と隆国がさりげに将軍になってるじゃないですか!
今までは将軍級の実力ありとうたわれながらも軍長表記だったので、
何かスッキリしました。

呉鳳明が出てきたことで、騰軍も戦力補強のために近くにいた飛信隊・玉鳳隊を招集しました。

信&王賁が組むのはなかなか新鮮。
だけど「楽華隊がいれば飛信隊など後方支援だ」
とかいうあたり、
王賁って結構蒙恬の実力は認めてる感じ。
境遇の共通点もあり、
楚軍の 項翼&白麗とまではいかなくてもちょっと蒙恬には思い入れがあるのかも。

しかし、王一族の本家か何か知らないけど、
仮にも合従軍でも配属された騰軍であり、
そこの大将・騰や録嗚未・隆国に対して王賁のあの口の利き方は何なんだろう。
王一族の分家・王騎の残党軍だから?
信と出会った当初も、王騎のことを"どこぞのバカ"とか言っていたし、
王騎に対して何か特別な感情があるんだろうか。

父・王翦に援軍を要請するのを拒んだように、
父親ともなんらかの確執があるのか。
王翦の評判も耳に入っているだろうし、
息子として複雑な感情を抱いているのかも。
このあたり、いつか詳しく掘り下げてくれるといいのになー。


そしてここにきてビッグな新キャラが登場しました。
14年間投獄されていたという、
"魏火龍七師"・霊凰、凱孟、紫伯。
秦の六将・趙の初代三大天の時代における
魏のビッグネームのうち、生き残っていた3人だとか。

霊凰は呉鳳明の師であり、紫伯は凄腕の槍使い。
凱孟は豪傑さを表すためか、衝撃の5◯シーンが差し込まれていましたが…。

正直、いくらかつてのビッグネームとはいえ、
14年間も投獄されていた奴らを当ててくるなんて、ちょっと理解できない展開になってきました。

六将や三大天らと肩を並べるほどの実力者とか言ってますが、バリバリ現役で前線に居続ける今の廉頗と戦ったらどうなるんでしょう。
(そして凱孟はともかく、他の2人年齢不詳すぎ!)
今の時点では、魏火龍たちの登場の意味がまだよく分かりませんが、

果たして王賁が立てた策は通じるのか?!

次巻に続きたいと思います。


【メモ】
⭕信、矛を使うようになる。

⭕成蟜死後、成蟜一派は瑠衣が取りまとめ、政陣営に協力することを約束。成蟜亡き後に去った臣下は一割程度にとどまった。

⭕羌瘣、食いしん坊。

⭕第382話の扉絵、かわいい。

⭕壁、なんと当初は屯留で死ぬ設定だった!
しかし、"史記"の誤訳の関係により、死ななくてもいいことに!(笑)
あとがきより。

⭕おまけ4コマ「新技」

⭕カバー裏は、表紙側が成蟜の頭の上の飾りみたいなヤツ、裏表紙側がおまけ4コマの4コマ目と、羌瘣。

【政の年齢】時間軸の整理 2 【キャラの年齢】

合従軍編が終わり、
羌瘣も帰還したところで一区切り。

新章に進む前に、もう一度時間軸の整理と
政を基準にしたキャラたちの年齢について
まとめておきたいと思います。

前回の「時間軸の整理 1」は8巻までを追ったものだったので、
それを含め、大分さかのぼりますが9巻以降〜34巻までを時系列で追いかけていきます。


◆     ◆     ◆
《注意点》
◆     ◆     ◆  

時系列に沿って、作中の年号表記に照らし合わせながらキャラの年齢を調べていると、途中で微妙に年齢がズレてくることが何度かあります。

作品中に年齢がはっきり記されている場面があるので、そこから遡ったりして計算してみても、どうしてもズレが生じてしまいます。

正確にキャラの年齢をはっきりさせようとして、そのズレの矛盾を色々な角度から考えてみましたが、
何しろ紀元前の中国のお話なので、はっきり"この時期に◯◯は何歳"と明確にすることは不可能なのかもしれません。
現代とは年齢の区切りかたや数え方が違って当然でしょうし。


なので。
ズレが生じた場合は、その都度作中に明記された年齢に修正して進めていきたいと思います。


◆     ◆     ◆     ◆     ◆
《政の年齢と時間軸》
◆     ◆     ◆     ◆     ◆    


【8巻•過去編】
「長平の戦い」
[紀元前260年 9月]
数ヶ月後の正月(紀元前259年)に、政誕生。(1歳)

※中国では、生まれた時から次の誕生日までを一歳とするらしいので、数えどしでの計算をしました。

⇩ (9年)

【8巻•過去編】
秦国王、崩御。(戦神=昭王)
政(9歳)、趙から救出され、秦に。
[紀元前251年]

⇩ (3年強〜4年)

〜政、王位につく(13歳)〜
[紀元前246年]←(秦入国年より1年のズレ?)

※数えどしでの計算だと、救出時の9歳は計算が合うのですが、ここでは14歳になってしまいます‥‥。
はっきり13歳で王位についたとの記述があるので、微妙にズレますが、記述に合わせてここから13歳スタートで調整します。

⇩ (1年〜)

【1〜5巻】
王弟•成蟜の反乱。政(14歳〜)

⇩ (3ヶ月)

【5〜7巻】
信の初陣(魏国攻め•蛇甘平原の戦い)
[紀元前245年]

⇩ (3ヶ月)

【8〜10巻】
呂不韋・政暗殺計画
●貂、昌平君の軍師学校へ。
●信、王騎に無国籍地帯の平定を命じられる。

⇩(約3,4ヶ月)

【11巻】
●信、修業の地を平定
[始皇2年 年末ぐらいから始皇3年 3月まで]

●蒙驁軍出陣  (韓攻め)
[始皇3年(紀元前244年)2月]

●王騎軍出陣(趙軍防衛戦・馬陽〔乾原〕の戦い)
[始皇3年(紀元前244年) 3月]

政(15〜16歳)

⇩ (咸陽から馬陽まで、15日間)

【12〜15巻】
対趙戦(王騎 VS 龐煖)
馬陽近くの乾原にて、決戦(5日間)

【16巻】
●王騎死亡。
●信、馬陽から帰宅(約15日間)

⇩(1年)

【17巻】
秦趙同盟
[始皇4年(紀元前243年)]
政(17歳)
※8ページ「始皇四年 王騎の死から一年の月日が流れていた」
※113ページ「五年たてば俺(政)は二十二になる」

●始皇元年 = 政 13歳 
と考えると、
●始皇四年 = 政 16歳

ですが、
「五年たてば二十二」ならばここで政は17歳のはず。
ここから17歳として進めていきます。

⇩(半年?)

【18巻】
蒙驁軍による、魏の"山陽"攻略スタート
[始皇5年(紀元前242年)]
政(17〜18歳)

⇩(約2ヶ月〜)

【19〜22巻】
対魏・蒙驁 VS 廉頗
流尹平野での戦い(6,7日間)

【23巻】
●蒙驁と廉頗、和睦
●(〜1ヶ月後)羌瘣離脱
●(〜3ヶ月後)貂が飛信隊加入。
●山陽東郡宣言[始皇5年(紀元前242年)]

⇩(約5ヶ月)

【24巻】
向、懐妊
[始皇6年(紀元前241年)]
政(18〜19歳)

※貂加入後、3ヶ月経過。
※李牧と春申君の密会後、1ヶ月経過。

⇩(約4ヶ月〜)

【25〜33巻】
合従軍 VS 秦軍 函谷関攻防戦
[始皇6年(紀元前241年)]

⇩(約2ヶ月)

【34巻】
●羌瘣復帰
●蒙驁死去
[始皇7年(紀元前240年)]
政(19〜20歳)

●向、女児出産
●成蟜の変
[始皇8年(紀元前239年)]
政(20〜21歳)


【注意】⇩マークの()内の数字は、作品内の記述に基づき、
"巻から巻への間"に経過したであろうおおよその期間を示しています。



◆     ◆     ◆     ◆     ◆     ◆     ◆     ◆    
《各キャラクターの年齢について》
◆     ◆     ◆     ◆     ◆     ◆     ◆     ◆    

[1〜8巻まで]
◉政 ⇒14歳〜15歳?
※「時間軸の整理 1」編参照。

[9〜10巻まで]
◉政 ⇒14〜15歳
11巻の「始皇3年」表記から逆算。

[11〜16巻まで]
◉政 ⇒15〜16歳
「始皇3年」の表記から。

[17巻]
◉政 ⇒17歳
〈113ページ〉
「五年たてば俺は二十二になる」発言から。
始皇4年。

◉信 ⇒17歳
◉王賁 ⇒18歳
◉蒙恬 ⇒18歳
〈175〜176ページ〉
「六大将軍王騎が死して
一年と半年ー 玉鳳隊 王賁(齢十八)  飛信隊 信(齢十七)  "白老"蒙驁の孫にして蒙武の長男である楽華隊 蒙恬(齢十八)」表記から。

★王騎の死は、始皇3年の3月〜4月頃なので、始皇4年の9〜10月頃の場面ですね。
信と政は同い年。

[18〜19巻まで]
◉政 ⇒17〜18歳
「始皇5年」の表記から。

[20巻]
◉政 ⇒17〜18歳
◉信 ⇒17歳
◉羌瘣 ⇒16歳

★巻末に信と羌瘣の年齢明記あり。

[21〜23巻]
◉政 ⇒17〜18歳
「始皇5年」の表記から。

[24〜33巻]
◉政 ⇒18〜19歳
「始皇6年」の表記から。

[34巻]
◉政 ⇒19〜20,20〜21歳
主に、「始皇7年」・「始皇8年」の表記から。

*  *  *  *  *


つまり、34巻時点でのキャラクター年齢は、
政を基準にして計算すると

◉政 ⇒20〜21歳
◉信 ⇒20〜21歳
◉羌瘣⇒19〜20歳
◉王賁 ⇒21〜22歳
◉蒙恬 ⇒21〜22歳
◉向 ⇒17〜18歳
◉陽 ⇒18〜19歳


ってところですね。


◆     ◆     ◆     ◆     ◆     ◆     ◆  
元号から考える政の年齢》
◆     ◆     ◆     ◆     ◆     ◆     ◆    

たとえば平成の日本だと、
天皇が代わった時に元号が変わります。平成元年から始まり、翌年の1月が来て平成2年、平成3年・・・
と続きます。

この数え方で政の年齢を考えると、

始皇元年(紀元前246年) = 13歳
始皇2年(紀元前245年) = 14歳
始皇3年 (紀元前244年) = 15歳
始皇4年 (紀元前243年) = 16歳
始皇5年 (紀元前242年) = 17歳
始皇6年 (紀元前241年) = 18歳
始皇7年 (紀元前240年) = 19歳
始皇8年 (紀元前239年) = 20歳

となりますが、
17巻では、始皇4年で政は17歳。

34巻では、
135、136ページで呂不韋
「これより一年半後の式典じゃ
(略)『加冠の儀』じゃ
王が成人の年を迎え〜(略)」

と言うセリフから、(成人は22歳なので)この時政は20歳なかばと考えられます。

そして157ページ、
●「暦は新年に入り すでに春にさしかかろうとしていたが〜(略)」
●「始皇八年(紀元前239年)
政と呂不韋の戦いはこの年からいよいよ"決着"に向けて加速する」

という表記から、
政月生まれの政は21歳になっているはず。

この時代の正確な年齢の数え方がちょこっと調べてみてもよく分からず、何回考えてもズレてくる‥‥。

まあ、現実的にこの時代のことを正確に表せる訳もないということで、とりあえずズレのことは置いておきます。

以上のような理由から、政をはじめ、各キャラたちの年齢も1歳だけ幅をとっておきました。


・・・それにしても、未だ貂の歳が謎!



◆     ◆     ◆     ◆    
《貂の年齢は?》
◆     ◆     ◆     ◆    

手がかりとして、5巻巻末の番外編で
「オレより若干年上の奴(信)が〜」
と貂が発言していたことから、
信より2,3つ下ぐらいかと想像できます。
4つ以上離れると、子供的に「若干年上」どころじゃないでしょうし。
(とはいえ、見た目は8歳ぐらいにしか見えないけど‥‥。)

そうすると信14歳時、貂は11,12歳ぐらいでしょうか。

"呂不韋の政暗殺計画"時のことを思い出してみます。
伽タイムだった当時12歳(!)の向ちゃん、
刺客として現れた当時13歳の羌瘣、
この2人と並んでも、見た目的に貂が同じ年齢とはとても思えません。
羌瘣にはチビ助と言われる始末。
成長の遅い12歳‥‥としても無理があるし、
やっぱり少なくとも11歳か、もしかしたら10歳ぐらいかも?

その場合、5歳で祖父を亡くして天涯孤独となった貂は、5,6年もあの黒卑村で1人生き延びてきたことになりますね。
貂、すごすぎる‥‥!

しかし。
貂が軍師学校に行っていた期間は、およそ2年半ぐらいです。
王騎の死後、一旦信の家に休みをもらって帰ってきていますが、
それから約1年の間に成長しちゃったらしいので、
もし連載当初10歳だったら、12歳で軍師ってちょっと無理があるというか、あり得なさすぎなので、
妥当な線で11歳→13歳、ってところでしょうか。

現代日本に置き換えて、
(成長の遅い)小学5年生→(発育してきた)中学1年生
って感じですかねぇ。
‥‥あくまでわたしの想像ですが。
この仮説でいくと、
34巻時点で貂は17歳ぐらいですね。

しかしながら、
貂の年齢の想像をしていると、
軍師として飛信隊に現れたとき、
反発した飛信隊のメンバーたちの感情にも頷けます。。。

中学1年生に、命を預けるなんて‥‥!

ま、戦国時代と平和な現代の日本を比べるのも
おかしい話なんですけど。
(向ちゃんなんて12歳で伽ですからね!)


連載当初、原先生的には貂をフェードアウトさせる予定だったそうなので、
もしかしたら当初、明確には貂の年齢設定をしていなかったのかもしれませんね。

いずれ年齢表記はあるのでしょうか?
地味に気になるところではあります。

しかしながら、わたしはコミックス派。
わたしが知らないだけでヤンジャン本誌や他媒体等で原先生が貂の年齢に言及している事が今までにあった可能性もありますので、
あくまでここの内容はコミックスから読み取るわたしの勝手な推測ということで。

コミックスが何より楽しみなので、本誌ネタバレが怖くて検索もままならぬビビリっぷり。
もし貂の年齢がどこかで明記されていた場合はご容赦ください‥‥そしてどなたか是非教えてください!


*  *  *  *  *


また、追加事項があればその都度付け足していきたいと思います。

キングダム 34巻 「別の道」

*ネタバレあり*


羌瘣仇討ち編の続きから始まる34巻。

様々なことがありましたが、
何はともあれ
羌瘣帰還に胸沸き躍る嬉しさです。

そして物語は、
ここから一気に進行速度がサクサク速まり、
政の"加冠の儀"まであと約1年!

しばしなりを潜めていた呂不韋が、
本格的に動き始めます。

では、あらすじから。



【あらすじ】
最深の巫舞を幽連に破られた羌瘣。
呼吸が尽き苦悶する羌瘣は、
巫舞無しでほぼ無尽蔵に呼吸を保つことができる幽連の強さに対し、納得がいかない。

幽連は、5年前の"祭(さい)"について語る。

5年前の"祭"で幽連が他の氏族と手を組み
羌象を討った後、
"祭"の最後まで生き残ったのは、
幽連と、幽連の実の妹だった。
そして幽連は蚩尤の力を得るため、
実の妹を手にかけ、蚩尤となった。

蚩尤一族の巫舞は、
精神を内なる深い部分 へ向け、
人の持つ秘めたる力 を引き出す術である。
意識を"外"から乖離させ、
集中力を研ぎ澄ませるために
特殊な呼吸法と"神堕としの舞"により
意識を陶酔の中に落とし込むことが必要となる。

"意識を外に縛りつける鎖=感情"
を強制的に断ち切ることで、
意識を外部から引き離し 内に向けさせることが
できるのだという原理から、
"祭"では同族の村から2人が選出されるという
ならわしがあったのだ。

実の妹が最後の相手となったことにより、
完全なる"情"の排除を可能にしたという幽連。
羌象を既に失った羌瘣に、
自分と同じ条件を満たすことはもはや不可能であり、自分を超えることは決してできないとほくそ笑む。

そして羌瘣は幽連に激しく殴打され、
意識が飛びかけていた。

失われゆく意識の中で、
敗北を覚悟する羌瘣。

実の妹を手にかけてまで手に入れた幽連の力に対し、
甘い自分とは違いすぎることを痛感。
それに抗う力ももはや持たない羌瘣は、
遠のく意識の中、死を覚悟する。

真っ暗に落ちて行く意識の中‥‥

羌瘣の脳裏に小さな光が見える。

光の先には、
信、尾平、昂、田有ら飛信隊のメンバーがいた。

その光のおかげでひとつの真理に辿り着いた羌瘣は、意識が戻り再び立ち上がる。
そして、
かつて羌象が自分を殺すためにあみだそうとしていたという術を繰り出し、
最後の巫舞を始める。

その術とは、"ハク領"と呼ばれる
"巫舞で落とし込める最深の限度の領域"
をも超える巫舞であり、
かつて羌象はその禁を冒し意識不明の状態に陥ったことがあった。

羌瘣は、薄れゆく意識の中で見た一条の光の存在を頼りに、
深く、ハク領の領域を超えて意識を落とし込み、
ハク領の禁を超えた巫舞でついに幽連を討ち取ったのだった。

5年をかけて、とうとう仇討ちを達成した羌瘣。
事後の処理や報告は羌明に任せることにし、
羌瘣はようやく帰途につく。
羌瘣が飛信隊を離れて、392日が経っていた。



副長・羌瘣が戻り、歓喜に渦巻く飛信隊。
かつての仲間達や、軍師となって加入してきた
貂らは喜びを分かち合う。

飛信隊に戻った後の羌瘣は、武功を挙げまくり
快進撃を続ける。

隊に戻る前に"2つの目標"を立てたと話す羌瘣。
信と同じく「将軍を目指す」と宣言し、
信や貂を驚かせる。

2つ目の目標はと信が聞くと、羌瘣は
「信の子を産む」
と爆弾発言。
子作りの方法について象姉から間違った知識を
教えられ勘違いしていた羌瘣は、
貂から詳しく正しい内容を聞き、
赤面しながら当分の間 信を避けるのだった。

始皇7年、前半は特別大きな戦は起きず、
静かに時は過ぎていく。

そんな折、蒙驁将軍が死去。
蒙恬や信が見守る中、心穏やかにこの世を去る。

ほどなくして咸陽では、向が女児を出産。
咸陽では祝賀ムードに包まれた。

そしてさらに1年が過ぎ、始皇8年。

王弟・成蟜の第一夫人である瑠衣(るい)が
曽祖母の80歳の祝いのため、
10年ぶりに"屯留(とんりゅう)"へ帰郷していた最中のある日、
突然趙軍が秦に向けて出陣を開始する。

合従軍の戦の後、中華全ての国が内乱を収めることに集中している中、
李牧が一時的に宰相の職を離れ、最も国内が揺れ動いているはずの趙が動き出したことに
咸陽では誰もが意表をつかれていた。

そして趙のその軍は、2万ほどの軍で
"屯留"を目指していた。

"屯留"は、古くは趙の領土であったため、
一帯の住民には半分は趙の血が流れている。
このため、仮に"屯留"が趙に奪われれば、
一帯がこぞって趙に寝返る恐れがある、
と危惧する呂不韋

タイミング悪く"屯留"へ駆けつけることのできる将軍が出払っており、
対策に悩む首脳陣に対し、
呂不韋は「"サイ"攻防戦の時のように大王が再び出陣してはどうか」
と無茶な提案をする。

呂不韋に何か企みがあることは明白であり、
昌文君は猛反発するが、
そこに成蟜が現れ、自らが出陣すると宣言。
政たちは驚くが、
成蟜の妻である瑠衣が"屯留"に帰郷しているタイミングであったこと、
瑠衣の夫である成蟜は現地で人気が高く、
士気をあげる人物としては最適であること、
を考慮し、成蟜に出陣を任せることになった。

しかし、成蟜に"屯留"の沈静化を任せて送り出したものの、
政は、今回の趙軍の動きに何か違和感を感じていた。

そして数日後。
"屯留"に到着した成蟜軍は、趙軍を半日で撃退。
趙軍はあっさりと全軍を退却させる。

事がうまく運び過ぎなことに違和感を感じる成蟜だったが、
"屯留"の住民たちは喜びに沸き、成蟜を歓迎する。

そして城主代行を務めているホカクという男が成蟜を出迎えるが、
そこに瑠衣や瑠衣の曽祖母の姿は無かった。
不審に思った成蟜は2人のもとに連れていけと命じる。
しかし、連れていかれた先でホカクは態度を一変させる。

何と、ホカクは成蟜が連れて来た兵の一部や
龍羽将軍と通じていた。
そして裏切り者達とホカクが呼び込んだ衛兵たちは突然反逆を起こす‥‥。


5日後、咸陽に"屯留"の異変の報が届く。
咸陽では、"成蟜が突然反乱を起こした"
と伝えられ、
呂不韋はここぞとばかりに成蟜一派を抑圧しようと動き出す。

一連の動きに疑念を抱く政。
政は、趙もからんだ呂不韋の陰謀ではないかと
訝しみ、
おそらく罠にかかったのであろう成蟜を救出するため、
飛信隊に早馬を送るーーー。



* * *



おかえり、羌瘣‥‥!

5年にわたる羌瘣の仇討ちの旅が、
とうとう終結しました。

今となれば、幽連も"祭"にとらわれた、
哀しい人間だったのかもしれません。

羌瘣もかつては"祭"の掟を信じ、掟に従って生きてきました。
バァから"祭"までの命だと言い聞かされて育ち、
外の世界を夢見る羌象のために命を捨てる覚悟でした。
しかし、羌瘣を殺したくない象姉のとった行動から始まり、"祭"で
"突出した才能を持つ羌瘣の不参加"

"掟破りの手組み"
が黙認された事実を知り、
掟が絶対だと聞かされて生きてきた羌瘣は
怒り狂い、仇討ちのために里を飛び出し、
現在に至るのです。

幽連は、
蚩尤になりたくて、力が欲しくて自らが描いたシナリオのはずなのに、
蚩尤となった後、人格が崩壊し手がつけられぬ状態になってしまったのは
結局、羌瘣が言うようにそれだけ幽連と妹の絆は深かったのだと思います。


羌瘣と象姉の絆も負けずと深過ぎたからこそ、このような結果になってしまった訳なのですが、
瀕死状態の羌瘣の脳裏に、飛信隊の姿が浮かんだところはジーンときましたね‥‥。

象姉を想う羌瘣だからこそ、仲間を想う気持ちも当然強くて、
飛信隊で築いた仲間との絆は深く沈む意識の奥で一条の光となって羌瘣を支えていた。

「私の帰る場所は‥‥ もう他の所にあるんだ‥‥」

‥‥泣けました。


しかし羌瘣、ガスガス殴られてましたねー。
可愛い顔がとんでもないことになってました。
そのせいなのか否かは謎ですが、第361話から第363話までの羌瘣の顔が変貌を遂げすぎて定まってないのがちょっと気になりました。
(なんかボールみたいな顔が多かった。)

でも無事に飛信隊に戻った時は、
いつもの羌瘣でしたね。
喜びに沸き立つ仲間たちに、大分照れてる姿が可愛すぎます。
喜びすぎの尾平に、信が肘で突き飛ばされてるシーンが笑えます(69ページ 5コマ目)。
良かった。
本当に良かった。

さて、ここから本格的に気になり始めたのが
信 × 羌瘣 × 貂 の関係。。。

最高に男くっさいのが魅力のキングダムに恋愛要素は不要だと思っていた私でしたが、
原先生的にはどちらかを信の相手に決めるようなので、
そうと知ってしまったからには話は別です。

羌瘣が帰ってきたら、貂はどうするんだろう‥‥、羌瘣離隊後、蒙毅のかわりに臨時で派遣されたようなもんだったから、
軍師学校に帰るのかなあ‥‥
などといろいろ想像していましたが、
普通に残ってましたね。

そして34巻のハイライト‥‥
羌瘣の

「お前の子を産む」

発言!!

これは衝撃的でした!!!笑

羌明の話からちょっと興味を持ったからだろうけど、象姉に適当なことを教えられて子作りの何たるかを知らぬまま言っちゃうところが可愛すぎ。
挙げ句貂に真実を教わって自分が言ったことの意味を知り、信を避けまくる始末(笑)。
そして満更でもない信(笑)。


しかし、信と羌瘣のいつもの剣の打ち合い稽古(このシーン、好き)の様子を見ながらも、
あえて無関心を装うかのように茶をすする貂、
何やら複雑な心境なのでは。

そもそもは羌瘣のように強くなりたくて、
強くなって信のそばにいたくて、
羌瘣に弟子入りしようとしていた貂。
かわりに軍師への道を紹介してくれたのも羌瘣でした。

晴れて軍師になって飛信隊に入隊した貂ですが、
本当は羌瘣のように、隣で一緒に戦いたかったんだろうな‥‥。
いつだって、貂は健気なのです。
自分がなりたかった立ち位置にいる羌瘣を見つめる貂は、なんだか切ない。

さてこの3人、今後どうなっていくのでしょうか。。。
お手やわらかにお願いしたいものです。。。



さて、羌瘣が戻り、
蒙驁が死去して向ちゃんが出産し、
一気に物語は進行します。

蒙驁じィちゃんと蒙恬のシーンには
ホロリときました‥‥。
(あれ、蒙毅は?)
蒙武の献杯シーンもグッときました。
(回想のちび蒙武、可愛すぎです)


合従軍という中華史上でも稀に見る大戦が挟み込まれたため、
そもそもの始まりであった国家内乱の首謀者・呂不韋の存在が霞んでいましたが(実際、合従軍編での呂不韋は超小物に見えた)、
これからひと波乱ありそうな予感。
僻地に飛ばされた李牧も予言しています。


そして成蟜に、まさかの見せ場が!
しかも嫁、超絶美女!
なんかちょっといいヤツになった成蟜ですが、
呂不韋の罠にかかったっぽい様子。

原先生が言っていた、"史実にある成蟜の反乱"
はこのタイミングだったんですね。
(※公式ガイドブックの回 参照)

もともと趙の商人だった呂不韋は何やら怪しい動きを見せはじめ、李牧不在の趙の王宮大臣を買収しているっぽい感じです。

キモ男・ホカクに目を付けられた瑠衣と、
まんまと嵌められた成蟜はどうなるのか?

次巻へ続きます。





【メモ】
⭕李牧、合従軍敗戦の責任を取らされ、一時宰相の権利を失い僻地の監督業務に就いている。

⭕政と向の子、麗(れい)誕生。
確か向の前に、第一子がどこかの宮女との間に生まれているはずだが、触れられていない。

⭕呂氏陣営のモブ大臣たちの会話で、
「昌平君だ やはりまずは四柱の昌平君を
もう一度陣営の中心に」
「オオ そもそもあの方の後ろにも巨大な‥‥」
(第367話 124ページ)
とある。
昌平君、やはり合従軍戦で呂不韋よりも国を優先したばかりに、
陣営の中心から外されている?
そして昌平君のバックには巨大な誰が?

呂不韋、政が22歳になる"加冠の儀"の式典にて国を乗っ取る計画。

⭕始皇8年(紀元前239年)、春に差し掛かる頃、
成蟜の反乱が起こる。

⭕おまけマンガ「狼牙がゆく 3」

⭕カバー裏は表紙側が羌瘣のハチマキ、
裏表紙側はおまけマンガ「狼牙がゆく 3」の続き。

キングダム 33巻 「不抜」

*ネタバレあり*


長きに渡って続いた合従軍編、
ついに完結です。

サイに入ってからの盛り上がりには、
結構泣かされました。。。

政たちと山の民との関係にもグッときます。

戦が落ち着いてからは、
待ちに待った羌瘣仇討ち編。
(早く帰ってきて!)

大戦の後だから中だるみしそうなところに
羌瘣を差し込んでくるあたり、
原先生の展開の進め方がニクい‥‥!

では、あらすじから。


【あらすじ】
連日の戦の疲れを背負いながらも、龐煖との一騎討ちに挑む信。

麃公将軍の置き土産で片腕を負傷している龐煖に対し、
信は、龐煖自身ではなく龐煖の"矛"を狙って
全力で剣を叩きつける。
反動で体勢を崩した龐煖の隙をつき
剣を刺し込んだ信は、
わずかに退く龐煖に対し、
龐煖の顔面に一太刀浴びせることに成功。
龐煖は矛の柄で信を殴打し、その体を吹き飛ばすも、信は再び立ち上がってみせる。

明らかに格下とみていた信に深手を負い、
戸惑いを見せる龐煖。

その時、李牧軍が割って入り、
一騎討ちの体が崩れる。
そして李牧からの"全軍退却"の指示を伝えるため晋成常(しんせいじょう)が現れ、
龐煖の一騎討ちの継続を制止。
晋成常から聞いた李牧からの伝言を受け、龐煖は退却していった。

楊端和らは龐煖を追おうとするも、
そこに晋成常が割り込み、妨害。
そこから晋成常率いる趙軍と山民族との乱戦になる。
しかしながら、山民族の圧倒的武力の前に
もはや戦局は覆ることなく、
晋成常は討ち死にし、趙軍は全軍退却したのだった。

ついに李牧軍を撃退した秦軍。
サイでは喜びと歓声が沸き立つ。

バンコ族との山界の大戦を投げ出してまで
駆け付けてくれた楊端和に、
心からの感謝を伝える政。
住民たちも、頭を下げる政にならい、
楊端和ら山民族に対し敬意をはらうのだった。

その夜、サイの城では住民たちと山民族とで
宴が開かれ、秦の勝利を祝う。
翌日も政は一日中サイを回って住民たちをねぎらった。
そしてその翌日、楊端和とのまたの再会を誓って、咸陽へ戻るのだった。

一方、
サイから退却した李牧軍が4日をかけて函谷関前の合従軍へ合流した後、
合従軍は全軍函谷関から完全撤退。
総司令である春申君は、
合従軍の"落としどころ"をつけるため
秦で軍の解散はせず、
"離反国・斉"を裏切り者とし、侵攻することに。

次は合従軍 対 斉 の全面戦争になろうとしていた。

しかし、合従軍の背を追う蒙武軍の猛追により、
斉の被害はそこまで拡大せずにおさまり、
斉の都市・饒安(じょうあん)を落としたところでようやく合従軍は解散するのだった。


それから、一ヶ月の月日が経った。

咸陽では、此度の合従軍戦に対する
論功行賞が行われる。

今回の戦いでは、
各所の将をつとめた
蒙驁・張唐・桓騎・王翦・蒙武・騰・麃公
の七将の功績に序列をつけることは難しく、
一将を除き六将には等しく
国防の"特別大功"が授けられた。
そしてこの大戦の第一功は、
ひときわ武功の厚かった蒙武に与えられる。

次に、今回の論功行賞では、
この七将に継ぐ三つの"特別準功"が与えられた。

一つ目は、サイの住民へ。
二つ目は、山の民の王・楊端和と、その一族へ。
そして三つ目は、何と信に与えられた。

信は、
初戦で趙の万極将軍を討ち取り、
その後南道の李牧軍を麃公と負い、そこで戦い刻をかせぎ、
サイでは最激戦区となった南壁の将として守り抜き、
最後には三大天・龐煖に立ち向かい、一騎打ちの末に秦国の武威を示した、
という多くの功績により
三千人将へ昇格となるのだった。


半月後。
三千人隊となった飛信隊は、千人将・岳雷(がくらい)を含む麃公兵が加わり、
信はいつにも増して張り切っていた。

新生飛信隊が、
合従軍の侵攻による復旧作業と
敵軍からの防衛にあたっていたその頃・・・

場面は切り換わり、
趙国、老眉(ろうび)。

象姉の仇討ちのため、現蚩尤・幽連を追っていた羌瘣は、
かつて"祭"から脱走し、現在は外界と羌族をつなぐ一団の人物・羌明(きょうめい)に会い、
幽連の所在に繋がる情報を聞き出そうとしていた。

羌明は、かつて覚悟が足りずに恐ろしくなって"祭"から逃げ出した自分の素性を羌瘣に語る。

追っ手を返り討ちにし、
命からがら逃げ延びた羌明は、
羌族から"一族のために一生を情報役として
つとめるのであれば見逃す"
という取り引きを受け、
外界で暮らしている一団の長となっていた。

秦に家を持ち、夫や2人の子どももいると話す
羌明に、
羌瘣は興味を持つ。

外界を夢見て"祭"で命を落とした象姉のことを
思うと、
羌明のやり方は狡いと感じる羌瘣だったが、
がむしゃらに生きるその生き方も
一つの道としてあってもいいのではないか、と
羌明に語り、
羌瘣の言葉に対し礼を言う羌明だった。

羌瘣は、羌明から幽連の根城の場所を聞き、
"老山"へ向かう。

幽連は、蚩尤となった後に人格が崩壊したという。
初めは魏王に抱えられたが、
手に余った魏王は幽連を追放。
その後趙へ流れ、幽連はもはや手がつけられない状態となっているらしい。

羌瘣は老山に入り、ついに幽連と対峙。

羌瘣が自分を追っていることを知っていた幽連は、22人もの一族の巫舞使いを呼び寄せ、準備していた。
あえて情報を流し、羌瘣をおびき出したのだという。

幽連は羌瘣を挑発し、一族の手下と戦わせる。

羌瘣が巫舞を使うと、手下達では相手にならず、
羌瘣はついに幽連まで辿り着く。

最深の巫舞で幽連に向かう羌瘣。
しかし、幽連は羌瘣の動きを見破り、
羌瘣は呼吸が尽き巫舞が解けてしまう。

才能がずば抜けていても、
祭をくぐっていない羌瘣の巫舞はままごとだ、
と罵る幽連に、羌瘣はその場に崩れ落ちるーー。



* * *



サイ、"不抜"となりました。(涙)

信×龐煖もどうなることかと思ったけど、
麃公さんの置き土産のおかげで善戦!
まさか龐煖の顔面に傷を負わせるなんて、
びっくりしました。

ちなみに信が龐煖に一撃を入れる時、
羌瘣が微笑む顔とリンクしますが、
何この通じ合ってる感。。。(ドキドキ)

しかしこの時のための麃公の死だったのかと思うと、
今後の展開も含め物語のつながりが壮大すぎて胸が詰まります‥‥!

端和様のシーンも痺れました。

🔴晋成常 : 「山猿風情が 許さぬぞ
部外者の貴様らのせいで
今 この時 中華の歴史がねじ曲がってしまったことが理解できておるのかァ!!」

🔴楊端和 : 「当然理解している!

だが これは気まぐれな干渉などではない

四百年前の秦王 穆公(ぼくこう)の生んだ盟
そして現秦王とこの楊端和の結んだ同盟によるものだ」

🔴晋成常 : 「そ‥‥そんなも」

🔴楊端和 : 「それ以上さえずるな
平地の老将よ」

「黙って貴様らは敗者として史に名を刻め」


くっ‥‥!!カッコよすぎるよ端和様!
次の次のコマで尾平・去亥・慶の3人も
頬を赤らめてやがるぜ!!

そしてハニワ男・晋成常はバジオウに殺られちゃいました。

李牧も山民族の登場によりついに退却を決意し、
まさかの合従軍敗戦の将となりました。


政と楊端和のシーンは良かったですねぇ。
政の振る舞いを見た秦兵・サイ住民たちが
山の民に敬意をはらうところにもグッときました。
端和様が望んでいた、"外界との交流"の
大きな第一歩が、今ここに!

さりげに端和様を見ては終始顔が赤い壁(へき)でしたが、恋バナ大好き介億先生にさっそく目を付けられていたところが笑えます。

ボロボロになったサイの城下を見つめながら
政が信に弱音を吐くシーンも、今後に生きてきそうな良いシーンでした。

自分がたきつけたせいで、サイの人口の半分を失わせたという現実に胸を痛ませる政に対し、
信が話します。


🔴政 : 「やはり違うものだな
王宮にて報告で知る戦争と
実際に目の当たりにする戦争は」

🔴信 : 「‥‥当たり前だ
そこで何も感じねェ奴は頭がどうかしてるし
そんな奴は絶対に人の上に立っちゃいけねェ

‥‥‥ たしかにお前にそういう計算があったのは本当だろうよ
だけどな 政 オレは途中から思ってたんだ

民もバカじゃねェ
連中も乗せられてることに気づいてんだろうなって

気づいてなお
あんなに目ェ輝かして最後まで戦ってくれたんだと思うぜ」



信がこう言い切ったことで、
政は大分救われたんだろうな。

2人の友情も熱いぜ‥‥(涙)。



そして論功行賞です。

なんと信が"特別準功"受賞!!

功績を政が読み上げる時、
内容から既に信のことであると分かります。
分かって聞き入っている昌文君の表情に、
何故だかわたしの涙腺はゆるみました。
もう、息子だか孫だかを見るような目です。。。

信はめでたく三千人将昇格で、
壁にも並びました。(青ざめる壁。笑)


そして合従軍が去り、平穏が戻った秦。
新生飛信隊には、麃公兵が500人加わり、
戦力増大!
新キャラ・岳雷(がくらい)千人将と
ちょっとヤンキーちっくな我呂(がろ)が登場。

「飛信隊の軍師が小娘というのには驚いた」
と話す我呂は、
さらにその女軍師は剣もかなりの使い手らしいとどこかで聞いたらしく、
噂では貂と羌瘣がごっちゃになっているもよう。

(まあ、貂がくるまでは羌瘣が飛信隊の軍師的役割を担っていたし、更に凄腕の剣士ということで、あながちその噂は間違ってはいないけどね?)

羌瘣を思い出し、尾平、慶、昂、田有らが思いを馳せるシーンで、
貂だけが複雑な表情‥‥
(嫉妬か?まさか嫉妬なのか?)。

尾平が羌瘣に早く会いたいよー!と叫ぶ場面から、
物語の場面は羌瘣のいる趙・老山へと移ります。


まず、
ちゃんと仇討ち描いてくれるんだ!
とテンション上がりました!

象姉の仇である幽連に、やっと辿り着いたところから仇討ち編が始まります。

少しだけ時がさかのぼって。
羌族の協力者・羌明と出会うシーン。

かつて"祭"から逃げ出した自分の過去を、
本音で語る羌明に、羌瘣は少し興味を持ったようです。

さらに羌明には秦に家庭があり、子どもも2人いると聞き、
「子供とかいるのか‥‥二人も‥‥」
「へー 子供‥‥って どう‥‥」
とか何とか、ひとりで微笑みながらつぶやく羌瘣。
何やら子供に興味を持ったもよう。

‥‥ここでの会話がきっかけとなり、
後に爆弾発言をすることに繋がるという
衝撃の事実は、まだ本人も知らない‥‥笑



羌瘣は、同族の者と話す時は
年相応の少女に見えますね。

象姉が死んだ時に自分の中の何かが壊れた、
と羌瘣は以前信に話していましたが、
今でも里のバァや識や礼と話す時、
そして今回羌明と話している時の
羌瘣の表情と口調は、どこかやわらかい。

飛信隊にいた時なんて、無愛想な上に
口調も固かったので、
このあたりのギャップも興味深かったです。


そしてついに積年の思いを果たすべく、
幽連と対峙する羌瘣。
用意周到な幽連は、幽族から手下どもを22人も
引き連れてきていました。

幽連は高みの見物で、
羌瘣を見下ろしながら挑発します。

🔴幽連 : 「こいつはもう一人の代表だった
象(しょう)という女のせいで"祭"に出られなかった

こいつに勝てないと踏んだ象に香(こう)で眠らされたのさ
アッハハハハ」

🔴羌瘣 : 「!!」
「違う 象姉は私と戦いたくなかったからそうしたんだ
勝てないとかそういうことじゃない」

🔴モブ幽族手下 : 「ブハハ
そりゃァ本人に聞いてみねェと分かんねェだろ

あーでも もうそいつ おっ死んでんだっけ?」

🔴羌瘣 : 「‥‥貴様」


このやりとり、非常に腹立たしくもありましたが、
妙に頷かされる考えでもありました。

確かに、象姉は妹のように思っていた羌瘣と戦いたくなかった。
しかし他に自分たちより強い相手が見受けられなかったことから、
羌瘣と戦うことになるのは必至。

羌瘣の性格をよく知る象姉は、
羌瘣が"祭"で自分を初めに狙うとは思えず、
(羌瘣自身も、象姉が生き残るために他の氏族を先に片付けるつもりでいた)
自分と戦うころには羌瘣の呼吸は尽きかけているだろうと予想。
どうしても羌瘣を殺したくなかった象姉は、
香で羌瘣を眠らせ、
ひとり"祭"に出向いた。
羌瘣の才能が突出していることを知っていた他の氏族のバァ達も、羌瘣の不参加を黙認した。

これが5年前の"祭"での出来事でしたが、

読者の私たちは、羌瘣の思いも、象姉の葛藤も
知っているからこんなのは挑発にすぎないと
分かるけれど、
知らなかったとしたら、
幽連が言うように、羌瘣に勝てないと見越した象姉が香を盛った、
と考えられなくもないですもんね。

羌瘣にしてみれば、象姉の思いは自分の想像でしかなかった。
そこにこんな侮辱と挑発を受ければ、怒りで我を忘れてしまってもおかしくないぐらいです。

しかし、想像以上にというか、想像通りに
羌瘣が象姉を信じる思いは強く、
自分の想像は確信だったため、あまり意味は無かったようですが。

さらなる挑発にも負けず、羌瘣は冷静に
巫舞を使わずにできる限り素の呼吸法だけで手下共を斬っていきます。

そして幽連との決戦へ。

ところが予想に反してめちゃくちゃ強い幽連!!

羌瘣の最深の巫舞が破られてしまい、
大ピンチに!!


🔴幽連 : 「卑怯な手を使う私は弱いとでも思っていたのか?

それとも姉への愛が力になると思ったか?
怒りが力になると思ったか?
そんなままごとが蚩尤に通じると思ったかクソガキ」

🔴羌瘣 : 「‥‥何だとっ‥‥」

🔴幽連 : 「巫舞とは
精神を内の深い所へ向け 人の秘められた力を
引き出す術だ

その集中力を生むために 特殊な呼吸法と
神堕としの舞で意識を陶酔の中に落とし込む

ならば 怒りだの愛だの
感情のさざ波は意識を外に縛りつける鎖以外の何物でもない

巫舞が意識を外から乖離させ
内に向けさせるためだけのものならば
そこを縛りつける現世のしがらみ
情だの何だのを断ち切れば話は早かろう

それを強制的にやろうと考えて作られたものが何かーーー

分かるか小娘」

🔴羌瘣 : 「‥‥ "祭"か」

🔴幽連 : 「その通りだ」

「今の私は助走なしに巫舞と同じ領域まで落とせる」

🔴羌瘣 : 「!」

🔴幽連 : 「"祭"をくぐったからだ」

「生まれ持った才能はお前が一番なのだろう
だが肝心の"祭"をくぐっていない
お前は本物の蚩尤になり損ねたんだよ間抜けが」




‥‥思ってた。
卑怯なオマエは弱いと思ってた。
愛だの怒りだのが力になると思ってた。

幽連、めちゃくちゃ強かった‥‥!!

羌瘣、どうなる?!



次巻へ続く。




【メモ】
⭕信、"王騎の矛"と"麃公の盾"を、
"信用できるダチ(政)"のところに預ける。

⭕信、三千人将へ、
王賁、三千人将へ、
蒙恬、二千人将へ昇格。
蒙恬、地味に値千金の活躍してるのになー。

⭕飛信隊・竜有、料理が得意と判明。

⭕幽連による"五年前の祭で最も蚩尤の座に近いと言われていた女"発言により、
羌瘣の現在の年齢は18歳と判明。
("祭"の時13歳だったことから。)
ちなみに羌明は32歳前後と思われる。

⭕おまけマンガ
「クイーン 端和様」

⭕カバー裏は、
ワンポイントでバジオウ、
裏表紙は信、政、羌瘣、貂プラス何故かオギコ。笑