キングダム 8巻 「過去」
*ネタバレあり*
- 作者: 原泰久
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2007/12/19
- メディア: コミック
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8巻は政の過去編がメイン。
以前政が成蟜の反乱で追われる立場だった時、
追っ手をしのぐために信とともに剣を持ち自ら戦ったり、
王宮の温室育ちとは思えないほどの場馴れ感を
信が疑問に思うシーンがありました。
なぜ、政が"そうなった"のか。
政が王位を継ぐことになる前の話。
わたしがキングダムを1巻から通しで読み返す時、毎回必ず泣いてしまう"泣き巻"が3巻ほどあるのだけども、
8巻はそのうちの初めの1冊。
紫夏と幼なじみとの関係性、養父の想いと養父への想いに泣けてきます。。。
過去編の後は、政がまた暗殺を企てられて
刺客に狙われまくります。
では、あらすじから。
【あらすじ】
※今回は特別に7巻最終話から繋ぎます※
宮女の向(こう)は、大王(政)から「伽(子作りのつとめ)」の相手に何度も指名を受けながらも、
毎回何故か全く手をつけてもらえないことに悩み、親友の宮女•陽(よう)に相談していた。
数回目の伽の指名の後、向はいつしか政に恋心を抱くようになる。
しかし相変わらず手をつけてもらえない向は、
ある日宮女たちの
「大王は昔"ヒカ"という名の商人の女にフラれ、
その傷埋めに向をただ呼んでいるだけだ」
というやっかみ兼噂話を耳にしてしまう。
落ち込む向だったが、陽に慰められ悩んだ末、再度政に伽に指名された際、
「なぜ指名をもらえるのかも、なぜ手をつけてもらえないのかもわからないが、自分は大王様の心が少しでも休まるのなら嬉しい、
自分は大王様のために"心の伽"をしたい!」
と宣言する。
そんな真っ直ぐな向を見て、
政は、指名の本当の理由(読書がしたかった)を話し詫びるが、
噂話で聞いた"ヒカ"という名の女商人の話は
実際は"シカ"という実在した女性のことで所々は事実を含んでおり、
政は向に過去の話を打ち明けることに。
(ここから8巻)
話の舞台は、秦の隣国、"趙(ちょう)"。
政が生まれる前の年、"秦"と"趙"は
"上党"という土地をめぐり2年もの月日を争っていた。
秦の総大将は 白起(はくき)、
趙の総大将は 廉頗(れんぱ)。
力が拮抗し、なかなか決着が着かないことに
痺れを切らした趙の王は、
総大将を名将•廉頗から若将•趙括に変更。
そのことで2年の膠着は一気に流れ出し、
趙軍の新総大将•趙括は秦軍の副将•王騎に
討たれた。
秦軍の勝利となり、趙軍は40万人の兵が降伏し投降するも、
白起はなんと、食料の問題と反乱の危険を理由に40万人全員の趙兵を生き埋めにして殺す命を下した。
未曾有のこの大虐殺は、
「長平の戦い」という名で歴史に深く刻まれることに。
趙国の国民が秦国を恨み憎む怨念を生み出すこととなった。
この惨劇の翌年の正月に、
政は趙国の国都•邯鄲(かんたん)で誕生する。
「長平の戦い」の翌年に趙で生まれた、秦の王族の血を引く政。
政が誕生して2年ほどした後、父親•子楚(しそ)が、十数年続いた趙での人質生活から呂氏により脱出させられ、秦国へ戻ることに。
そして残された政と母親は、秦からの仕送りが一切途絶えてしまう。
それから7年。
政は日々、飢えをしのぐために食料を盗み、
また、秦人という理由で邯鄲の住人からは執拗な
暴力•折檻を受けていた。
そんなある日、秦国の大王(当時昭王)が崩御。
新しい王が即位し、次期大王には、政の父•子楚が就くことが決定。
つまり、子楚の嫡子である政は次の太子となることに!
秦国大王の崩御はまだトップシークレットであり、
趙王にはまだ伝わっていないが、
その情報が伝われば、まず政は暗殺されることになる。
そうなる前に政を趙から脱出させるため、秦より使いの者•道剣(どうけん)らが送られてくるが、
政を連れて関所を越えるのは困難極まりなく、
呂氏の勧めた趙の闇商人の女頭目•紫夏(しか)に依頼が入る。
◆
紫夏はかつて餓死寸前の孤児だったところを、
たまたま通りがかった行商の養父に拾われた。
養父亡き後家督を継いだ紫夏は、
共に拾われ共に育った仲間•江彰(こうしょう)
、亜門(あもん)とともに闇商の規模を大きくさせることに成功。関所でも顔パスで通れるほどの顔をきかせていた。
政を秦へ運ぶというこの依頼は、失敗すれば紫夏らは国賊となり、斬首であろう危険な橋を渡ることになる。
江彰や亜門は依頼を断るも、
政の過去•現状を知った紫夏は、かつて養父が自分達を救ってくれたように、政を救うと決意。
依頼を受け、道剣らとともに政を脱出させるべく5つもの関所を通過することに。
美貌と気立ての良さ込みで、日頃の根回しも怠っていない紫夏は、関所を次々とクリアしていく。
最後の関所を越えた時、緊急閉鎖の狼煙が上がり
関所が閉門。
間一髪で全ての関所を通れたものの、政の逃亡がばれたのは間違いなく、
趙軍が総出で追って来るのは時間の問題。
一行は馬車を走らせるが、
政に異変が起こり、馬車を飛び出してしまう。
政は長年にわたる趙での虐待の日々により、
いつしか精神を病み、
また肉体の痛みを感じない体になってしまっていた。
政は精神をひどく病み、「長平の戦い」の怨念による亡霊のような幻に取り憑かれていたが、
紫夏の叱咤と優しさにより憑き物が落ち、
正気を取り戻す。
我にかえった政は、再び一行と秦を目指すが、
とうとう趙の追っ手に追いつかれてしまい、
道剣、江彰、亜門らは政や紫夏を守るために身を呈して死んで行った。
秦との合流地まであと一歩のところで、
ついに紫夏も討たれてしまう。
そして政は間一髪、昌文君らに助けられる。
紫夏らのおかげで、無事政は秦に脱出することができたのだった。
◆
政の過去を知り、号泣する向。
政も向に紫夏の話をすることで、
自分の中に何か変化を感じているようす。
この2人の間にもまた、新しい関係が始まることを予感させる。
そして現在!
魏の戦で武功をあげた信。
なんと百人将に昇格!
村で同じ軍だった田有(でんゆう)と再会したり、新しい甲冑を買ったりで
次の戦が待ち遠しい。
家に帰ると、突然信の前に羌瘣が現れた。
「王宮には絶対近づくな」と忠告し立ち去った
羌瘣に、信は状況が全く飲み込めずにいたが、
翌日咸陽から政の危機を知らせる使者が来て
かけつけると、
そこには政の暗殺をたくらむ刺客集団がいた。
なんとそのうちの1人は羌瘣だった。
「蚩尤(しゆう)」と呼ばれるその別の名の意味は‥‥‥。
* * *
紫夏、、、
亜門に江彰、、、
はー、泣けます、、、。
王弟反乱時の政が妙に場馴れしている感があったのは、
趙にいたこの時の壮絶な虐待経験からだったんですね。
されるだけでなく、自らを守るために攻撃もしているし。
秦からの仕送りもなく、「長平の戦い」のせいで趙人からは憎まれ、秦人の子を産んだ母は働き口もなく体を売って身銭を稼ぐ生活。
急に秦へ脱出できると聞かされても、
長年趙人から長平の恨みを一身に受けて生きてきた政は、
もはや普通の精神状態ではなかったのです。
やっと秦へ帰れるという脱出の道すがらでも、
幾度も怨念の亡霊に悩まされ、
矢を受けても痛みすらなく、
こんな壊れた人間が王になどなれるはずがないと
嘆く政。
そんな政を色んな意味で救ったのは、
闇商人の紫夏でした。
紫夏は政の絶望と葛藤に気づき、
激しく喝を入れた上で政を優しく包み込みます。
その背景には、孤児だった紫夏を拾って育ててくれた養父の存在がありました。
政を守るために、死の淵で追っ手の兵と戦う紫夏は、幾度も養父の言葉を思い出し、
戦いながら政に語りかけます。
🔴紫夏 : 「私も幼い頃
赤の他人に命がけで助けられた
その人は私が十歳の時また別の人間を救おうとして命を落とした
その人の死に際私は死なないでくれと泣き叫んだ
受けた恩に対し私はまだ何一つ返せていないと
しかしその人はっ」
🔴紫夏の養父(回想) : 「恩恵は全て次の者へ
私の命も幾人かの命によって救われて来た
その恩を余さずお前達に注いだつもりだ
紫夏 お前がこの先他人のために何かできたら
それは私にとっても大きな意味をもつ
どんなに些細なことでもいい‥‥
受けた恩を次の者へ
フフ そういうものだ紫夏
そうやって‥‥」
(矢に撃たれる紫夏)
🔴政 : 「紫夏っ」
🔴紫夏 : 「見るなっ」
(そうやって‥‥
そうやって人は‥‥
つながってゆく
この子は殺させない)
この後、紫夏は討たれ、政は救出に来た昌文君の隊によって助かります。
死に際に紫夏が政に残した言葉。
🔴紫夏 : 「あなたは生まれの不運により
およそ王族が歩まぬ道を歩まされた‥‥
しかし
逆に言えばあなたほどつらい経験をして
王になる者は他にいません
だから きっと
あなたは誰よりも偉大な王になれます」
政は、紫夏によって秦へ戻ってこられただけでなく、
体の痛みも、麻痺して失っていた味覚や嗅覚さえも、取り戻すことができたという話。
養父から紫夏へ、紫夏から政へ。
想いは全てつながってゆく。
身につまされるなぁ。。。
後半部分は政、またしても狙われます。
王宮にそうそうたる暗殺メンバーが集結、
その中には「蚩尤」と呼ばれる羌瘣がおり、
政の命を狙う‥‥。
政、過去も現在も狙われまくりだな。
次巻へ続く。
【メモ】
⭕政、9歳の時秦国へ。
⭕呂氏、有り金をつぎ込み、政の父親•子楚に取りいる。
⭕秦の戦神と呼ばれた王、政が9歳の時に崩御。
⭕信、百人将へ昇格。
⭕羌瘣、蚩尤と呼ばれる。
⭕おまけマンガ1「向と陽」
おまけマンガ2「信とテン‥‥と甲冑」