キングダム 63巻
*ネタバレあり*
前巻から何やら不穏な雰囲気が続き、
トラブル続きの桓騎軍。
無茶ブリされた飛信隊はいかに?
しっかりあらすじから追っていきたいと思います!
【あらすじ】
飛信隊は趙王都・邯鄲の手前に位置する2城"武城"と"平陽"の攻略のため、趙への進軍をはじめた王翦・楊端和・桓騎の3軍。
飛信隊は、平陽を受け持つ桓騎軍に配置されることとなる。
戦況は圧倒的に劣勢であった。
しかし3倍もの軍勢で待ち構える趙軍に対して、桓騎軍は全く手を打つことなく前進し続ける。
開戦後9日目が過ぎた頃、桓騎軍からは多くの死者・脱走者を出していた。
飛信隊は桓騎軍左翼の中でも"死地"と呼ばれる最激戦地・影丘に呼ばれる。
信たちが到着すると、先に招集されていた玉鳳軍はすでに壊滅状態であった。
瀕死の王賁を救護した信は、王賁から得た情報から影丘攻略の鍵となる場所へと歩兵団を集結させ、断崖絶壁の頂上を目指して前進させる。
趙軍からの落石の計を耐え凌ぎ、頂上まで登りつめた歩兵たちは騎馬隊への道筋を切り開き、信を呼び込むことに成功。
さらには3日前に王賁が仕込んでいた別働隊・亜花錦が、本来予定していた日程通りに現れた飛信隊の登場を見計らい挟撃の策を実行。
亜花錦の奇襲が成功し、信たちは岳白公本陣へと迫る。
趙軍は影丘の地形の利に油断していた。
趙軍にとっては安全な崖側に本陣を置いていたことが裏目に出て、秦軍に後方(亜花錦隊)と崖下(羌瘣隊)から挟み込まれる形となったのである。
勢いに乗る飛信隊だったが、
本陣の将である扈輒の側近・岳白本人が姿を現し、信の前に立ちはだかる。
◆
その頃、中央の扈輒軍本陣では、桓騎軍右翼で奮戦していた雷土が囚われの身となっていた。
オギコを通して桓騎から伝令を受けたことにより一旦戦局を立て直そうと考えていた雷土だったが、
たまたま部下が趙軍の将・龍伯公の末の子である曹還(そうかん)を捕えたことでこれをエサに利用しようと思いつく。
雷土は曹還の死体を磔にして龍伯をおびき出し、龍伯の首を獲ることで桓騎の戦いを楽にする算段であった。
しかし雷土の思惑以上に龍伯の怒りは凄まじく、
罠と知りながらも息子・曹還の死体の前に現れ、烈火の如く怒り狂いながら桓騎軍に猛威をふるう。
四面楚歌の敵陣にわざわざ現れた龍伯は雷土に討たれ力尽きるが、
龍伯の長兄・竜布(りゅうふ)までもが駆けつけてきたことにより形勢は逆転する。
竜布は父と弟の無惨な死を目の当たりにし、慟哭する。
怒りはおさまるはずもなく雷土ら桓騎軍は捕えられ、総大将・扈輒の本陣へと連れて来られたのであった。
少しずつ指や腕を斬り落とされ、足指の爪を剥がされ、全身を切り刻まれ、あらゆる場所に釘を打ちこまれる雷土だったが、
桓騎の"狙い"を聞き出そうとする扈輒の尋問には一切答えることはなかった。
固く口を閉ざす雷土の様子から、
扈輒は桓騎に何か策があるということを察する。
◆
影丘の激しい断崖を抜け、頂上に到着した桓騎軍左翼の信は、独特な動きをする岳白の体術にてこずり決着が付けられずにいた。
体術を極めた岳白は動きが素早い上に独特であり、片手に持つ剣で絶対的に防御した上でもう片方の手を拳闘術の攻撃用に駆使していた。
信は岳白の動きに対応するために王騎の矛を一旦尾平に預け、剣を抜いて岳白に挑む。
信は敢えて岳白の攻撃を身で受け、動きを止めたところを矛の威力を使って一気に岳白を切り裂く。
信の合図を見逃さず矛を信へと戻した尾平との連携がうまく成功し、信は岳白を討つことに成功。
岳白が討たれたことで後方に待機していた趙軍の後軍本隊が出陣してくるが、
すぐさま崖下で様子を伺っていた羌瘣隊が機を見て現れ混戦に。
満を持して亜花錦が岳白本陣を急襲し、本陣を壊滅。
飛信隊は見事影丘の攻略に成功するのだった。
貂は岳白軍の逆襲を警戒しつつ、そのまま影丘を抜いて中央・扈輒本陣を急襲するよう指示を出す。
影丘が抜かれたという報を受けた扈輒は、
飛信隊を中央部に来させぬよう
あらかじめ近くに留めていた虎白残留軍5千を北上させて飛信隊に対応させようと指示を出すーーー。
* * *
数的にも地形的にも秦側に全く明るい要素がないまま不穏な展開が続く平陽戦の桓騎軍VS扈輒軍でしたが、
信は左翼側を制して見事影丘を攻略しました!
頼もしい!
しかしながら、
開戦前に羌瘣が胸騒ぎがすると言っていたり、
桓騎軍に間違いなく何かが起こるのであろうと思えるくらい、全体的に不穏な雰囲気が醸し出されていますね。
開戦後、無茶な進軍で兵たちを死なせまくっている桓騎ですが、
戦況を見守る咸陽の首脳陣たちや王翦から見ても
桓騎にどんな策があって進軍しているのかはサッパリ見当がつかない様子。
なにせ今回は、百戦錬磨の桓騎軍側近たちですらかなり不安げです。
皆苦戦を強いられる中、
黒桜さんは援軍がもらえず、
土論一家はドロンし、笑
摩論は仲良しだけ連れて逃げようとする始末。
そして不穏な空気感は現実になってしまいました。
たまたま捕えた趙左翼の将・龍伯の末の子の曹還をエサに使い、
いっちょ龍伯殺っとくかー、
と思いついた雷土さん。
いつものようにむごたらしく死体を磔にして父親龍伯をおびき出したところまでは上手くいったのですが、
雷土が思っていたよりも龍伯一族の絆は固く深いものでした。
わが子を惨殺された龍伯はブチギレで暴れまくった結果雷土に討たれてしまいますが、
さらに長兄・竜布が乗り込んできて無惨に殺された父親と弟の死体を目のあたりにし、発狂!
雷土たちは竜布によって生け捕りにされ、総大将・扈輒のもとへ連れて行かれてしまいました。
‥‥しかしまさか、扈輒が拷問スペシャリストだったとは。
前巻で、趙の李白が
🔴「桓騎の所業の残忍さに趙の人間は異常に奴を恐れているが
そうではない
戦場において本当に恐ろしいのは
扈輒将軍だ」
と意味深な発言をしていましたが、このことだったのですね。(いや、充分桓騎も恐れるべき人間だろうよ)
雷土はオギコの伝令で桓騎の策を聞かされていた様子でしたが、
指や腕を斬り落とされても、爪剥がれて釘打ち込まれても、結局口を割りませんでした。
雷土は、龍伯たちの"親子愛"を目の当たりにして
🔴「そういうの知らねェからうぜーんだよ
バカ親子」
などと嘲笑していましたが、
竜布が来る前に逃げるタイミングがあったし、
拷問時に命と引き換えで桓騎の策をバラす選択肢もあったのに、
結局
"このあとの桓騎の戦いを楽にするため"に
危ない橋を渡ってしまい、
自分が助かるために桓騎を売ることをしなかった。
忠義も誇りも無かったのかもしれないけど、
無意識だったにしても、
雷土にとって桓騎は
裏切りたくない
"家族"ってことなんだな‥‥
と思いました。
雷土は、薄れゆく意識の中で
🔴「あれ‥‥? 何か‥‥少し
お頭のことが 分かったような‥‥」
と何かしらの気づきがあったようでしたが、
誰も知らない、桓騎の内面の感情。
いずれ明らかになる時が来るのでしょうか。
さて雷土を失った雷土兵はメッタメタ、
黒桜兵は虎白公にやられてボロボロ、
桓騎軍はまさに大ピンチ。
(余談ですが、黒桜さんの相手はひとイジりありきで敢えてイケメン虎白公を当て込まれたのかと
思っていましたが、全くそれどころじゃなさそう。)
秦軍中央(黒桜・リン玉軍)・右翼(雷土軍)はヤバい展開になりましたが、
左翼の信たちは見事に饅頭野郎を討ち取りました!
尾平が信に呼ばれた時は何事かと思いましたが、
大事な"王騎の矛"を預ける役割だったのですね。
アイコンタクトのみで信に矛を投げるタイミングをはかれるのは、立場的に尾平しかいない!(昂も手伝ってましたが。笑)
死にゆく饅頭野郎に、
🔴「この私を‥‥討った
快感 快楽
さ 最高 か
飛信隊 信」
と問われて、
🔴「‥‥ああ そうだな」
と答えた信。
🔴「フッ それでいい」
と力尽きる饅頭野郎に対し、
🔴「よくねェよ バカ」
と複雑な表情を浮かべる信は、
どことなくかっこよかった。
さて信が趙右翼の大将を討ちとったら後はスピーディ!
すかさず羌瘣隊が崖上に上がってきて後処理に!(関常GJ!)
かしこい亜花錦が絶妙なタイミングで岳白本陣を叩いて壊滅!
玉鳳と飛信隊のチームプレイで得た大勝利です!
さて扈輒は岳白討ち死にの報を受けて指揮を取り直しますが、
次巻ではこれが裏目に出るらしく‥‥
ラストのコマで、桓騎の口元が妖しく笑っています。
64巻へつづく。
【メモ】
⭕️扈輒側近の三公
⚫︎龍伯公(竜布・曹還の父)
⚫︎岳白公(饅頭野郎)
⚫︎虎白公(イケメン)
⭕️龍伯は扈輒の古き戦友であり、もはや家族的存在であった。
⭕️龍伯(父),竜布(長男,龍伯の死後に龍伯の名を継ぐ),曹還(末の子)
⭕️礼、崖から転落するところを昂に助けられ、ちょっと意識する。
⭕️ デキる子リン玉(ぎょく)、忠誠心のない一家が劣勢を察して見限り、散り散りになるさまを目の当たりに。
残ってくれたメンバーを自分の一家へ引き取ってあげたり、桓騎の心配まで。かなりの常識人!
⭕️おまけマンガ「お礼参り」